SUZUKI ワゴンR FX
[(RR)外観デザイン 外装パーツ インパネ周り シート周り 荷室]
[(ノーマル)外観デザイン 外装パーツ インテリア&試乗レポ]
エアコンは、全車に標準装備です。(「FX」の寒冷地仕様と「FS」はフルオートタイプ) カテキンエアフィルター付きなので、いつもクリーンな空気で快適です。 スイッチ類は最近主流のダイヤル式で、デザインも操作性もごく一般的なレベル。 しかし、外気導入/内気循環の切り替えが、レバーではなくボタン式になっているのは珍しいです。 そっとタッチするだけで切り替えられるので操作性に優れますし、見た目の質感もレバーより良いですね。 レバー式のように手探りで操作することはできないですが、素早く切り替えられる様は見ていてスマートです。
ドアトリムは、布もシルバーパネルもなく、まさに真っ黒。 ドアアームレストは大きめで、造形もなかなか良いですが、正直言って質感は高くありません。 肘が当たる部分を少しえぐってドアアームレストの幅を広げるなど細かい工夫が見られる一方、ドアポケットがかなり小さいのが気になります。 「RR」の解説ページでも触れましたが、この写真だとサイドシルに段差を造ってあるのがわかりますね。 乗降時に足が引っかかりにくくする配慮です。
実車を見て、一つ気づいたのですが、この車はスイッチ類にこだわりがあります。 電動ミラーの操作スイッチをドアアームレスト上に設けて操作しやすくし、スイッチのデザインも上品になっていて、手触りも良いです。 また、フューエルリッドオープナーやボンネットオープナーも大きくて操作しやすくなっています。 随所にコストダウンの跡が見えるものの、こういった細かい部分のデザインや操作性にはこだわっていて、単なるコストダウンではなく、毎日使う部分にコストを集中したという感じがしました。
居住空間の広さと荷室の広さのベストバランスを考えたというパッケージングは、確かによくできています。 居住空間は十分すぎるほど広いし、ラゲッジスペースもご覧のとおりなかなかの広さがあります。 ただ、残念なのはシートをスライドさせても床面積が変化しないこと。 写真では左側のシートを前にスライドさせているのですが、床面積を広げることはできません。 せっかく左右独立でスライドができるのですから、「ムーヴ」のように床面積を拡大できるような工夫が欲しかったところですが、もともとのスペースが広いので、実際にはそれほど困ることはないと思います。
ラゲッジスペースの壁面には、このような大容量ボックスがついています。 ここに収納スペースを設けることは珍しくはないですが、これだけ大容量でフタ付きというのは珍しいと思います。 防犯上外から見られたくないものや、汚れ物などを収納するのに便利だと思います。 もちろん、車内に貴重品などを置かないことは基本ですが、このように車外から目に付きにくい収納スペースがあるというのはうれしいですね。
「FX」のエンジンは、オールアルミ製DOHC VVTエンジンで、スペックは旧型と同じ54馬力、6.4kg・mですが、燃費は若干向上しています。 「FT」と「FS」は、パワーを抑えてターボの立ち上がりを重視したMターボエンジンを搭載し、スペックはやはり旧型と同じ60馬力、8.5kg・mとなっていますが、ロックアップ機構付きのミッションなどを採用したことにより、燃費は向上しています。 ターボ車と「FA」の4WD車にはEBD付きABSが標準装備となりますが、「FX」はABSがオプションとなります。 ちょうど「FX」の試乗車がありましたので、試乗した感想もお伝えしておきます。
実は、試乗してみて「困ったな」と思いました。 何が困ったかって、この車非常に良くできていて、静粛性も安定感もなかなかです。 ただ、あまりにも優等生すぎて、これといった特徴がなく、試乗レポートを書こうにも「何を書いたらいいのだろう?」と思ってしまったのです。 良く言えば「誰にでも受け入れられる乗り心地」で、悪く言えば「運転する楽しみに欠ける乗り心地」だと感じました。 まず、歩道の段差を下りるときですが、「ドスン」というような重い衝撃はなく、柔らかくゆっくりと衝撃を吸収してくれます。 車道に出て徐々に加速していくと、少し遠くからエンジンの音が聴こえてきます。 エンジンの音質は落ち着いたものとは言えず、ややガサガサとした感じですが、それがうまく遮音されていて、意外に静かです。 長い坂道を上りましたが、車内にエンジン音があまりこもらず、営業マンとの会話の邪魔になることはありませんでした。 停車中の振動は、最近の3気筒エンジンの車としては一般レベル。 走行中はスムーズに回るエンジンですが、停車前と発進時にやや振動があるのが気になりました。 ちょうど夕方の渋滞時だったため、あまり高回転まで回すことはできなかったのですが、ボディの大きさのわりには軽快に加速してくれたのは好印象でした。 後半は、かなり急カーブの続く下り坂を走りましたが、トールワゴンのわりにはロールが少なく、安定していました。 ハンドルを切れば素直に曲がり、低速では、アンダーステアが出るどころか、逆に自分から切れ込んでいくような感覚さえありました。(アンダーステアを覚悟していたため、相対的にそう感じたのだと思います) このあたりは、新開発のサスペンションと、4.1mというトップレベルの小回り性能のおかげなのかなという感じがします。 全体的にフラットな乗り心地で、落ち着いた印象を持ちました。 ブレーキに関しては、特に強力という感じでもなく、ごく一般的なレベルという感じ。 変速ショックやロードノイズなどもほとんど気になりませんでしたが、形状を変更したコラムシフトレバーは、(慣れの問題だと思いますが)少し動きにくいように感じました。
結局、10分くらい乗っていたのですが、ほとんど営業マンとおしゃべりしていました。 非常に快適なので会話が弾むわけですが、逆にそれを遮るような驚きというものがなかったのです。 プラットフォームを一新したというだけあって、旧型に比べれば静粛性や乗り心地は確実にアップしていると思いますし、これといった欠点も見つからず、安心して乗れました。 新型「ワゴンR」は、初めて見たときに、シンプルで誰もが親しみやすい車を目指しているのだろうと思いましたが、そういった意味では、走りも期待どおりのものでした。 各社ともこだわりのある車を発表している中で、こういった優等生的な車もあっていいのではないかと感じました。 それこそが、「ワゴンR」の目指しているものであり、新型「ワゴンR」は、その理想に確実に一歩近づいた車ではないかと思います。 クセがなく、誰もが普通に快適に乗れる車というのは、特に軽自動車の場合は重要なニーズなのかもしれません。
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