DAIHATSU ミラ
カスタムX [外観 外装パーツ インパネ周り シート周り 荷室その他]
Xリミテッド(S.D.P) [外観 外装パーツ インパネ周り シート周り&荷室&試乗レポ]
ノーマルシリーズの場合、フロントシートは、インパネシフト車もフロアシフト車もすべてセパレートタイプとなります。 インパネシフト車はベンチシートでもよかったのではないかと思いますが、そこはコスト優先というところでしょう。 インパネシフト車の場合はシートの間に何もなく、フロアが丸見えなのでちょっとさびしい感じがします。 センターアームレストの装備もないので、快適性ではカスタム系より一歩劣るという感じですが、シート形状の立体感はこちらのほうが上なので、シートバックの包まれ感が心地よく、座り心地は良いです。 なお、ノーマル系にも、シートリフターやチルトステアリングなどがセットになったアジャスタブルパック(15,750円)がメーカーオプションで設定されています。
ノーマルシリーズはリヤシートのスライドやリクライニングができませんが、広さはカスタム系とほぼ同じです。 数値上は室内長に50mmの差がありますが、これはほとんどヘッドレストの有無による差と考えてよいようです。 ヘッドレストが無く、シートバックもほとんど平らなので座り心地はカスタム系のものより劣る感じがしますが、それでも旧型「ミラ」よりはシートバックが若干高くなっているようですし、なんと言ってもこの広さは軽セダンの中ではダントツなので、それだけでもこの車を選ぶ価値はあるでしょう。 なお、ノーマル系はどのグレードを選んでもシートはすべて共通です。
これだけの居住空間を持つ車ですから、フルフラットは余裕です。 軽セダンではフルフラットにできない車もあるので、これは大きなアドバンテージと言えるでしょう。 ただ、ノーマル系はセパレートシートなのでフロントシート間に隙間ができてしまい、また、リヤシートのリクライニングができないので、フルフラットを頻繁に使うという人は「カスタムX」以上のグレードを選択したほうが快適性は高いでしょう。
フロントドアトリムのデザインはカスタム系と同じですが、クロスが省略されていたり、インナードアハンドルがメッキでなかったりと、質感はカスタム系より若干劣ります。 ただ、パワーウインドウスイッチの照明は全グレードで装備されるなど、使い勝手はどのグレードでも変わりませんし、ベージュ&グレーの明るい色使いなので、広々感ではむしろノーマル系のほうが上のように思います。 ノーマル系にはキーフリーシステムは装備されず、全車キーレスエントリーが標準装備となります。
リヤドアトリムも、カスタム系と共通のデザインです。
最近のダイハツ車のお決まりとも言える直角開きドアは、もちろん新型「ミラ」にも採用されています。 チャイルドシートや大きな荷物の積み下ろしもとってもラクですし、きわめて個人的なことですが、このカーチェックの写真などで車内を撮るときにもとっても便利です。 セダンタイプは全高が低いので乗り降りがしにくい傾向がありますが、この直角開きドアと段差を抑えた開口部などによってこの車はそういったストレスがほとんどありません。 ただ、特に風の強い日などには、勢いよくドアを開けて隣の車にぶつけないよう、同乗者に注意を促しておいたほうがよいかもしれません。
荷室の広さは、居住空間の広さから考えればまずまずの容量を確保しています。 カスタム系のようにシートをスライドして荷室の広さをフレキシブルに変化させることはできませんが、これだけの容量があれば日常の買い物程度なら困ることはないでしょう。 また、「カスタムL」も含めて固定式リヤシートだけの専用装備もあります。 それは、パッケージトレイというもので、シートバックの後ろに装着されている脱着可能な棚板です。 トノカバーとも呼ばれるものですが、これは後席の人用の荷物置き場やティッシュボックス置き場などとして使えるだけでなく、荷物を直射日光や外部の視線から守ったり、後方からのロードノイズを低減できるなど様々なメリットがあるものです。 大きな荷物を積むときには邪魔になって外さなければいけないときもありますが、これが付いている車は最近の軽ではあまり多くないので、貴重な存在です。 なお、ラゲッジアンダーボックスはスライドシート装備車だけの専用装備なので、この車には装備されておらず、床下にはスペアタイヤが収納されています。
荷物の量が多いときには、シートバックを倒して荷室を拡大することが可能です。 シートバックは左右一体型なので、左右のショルダー部のレバーを引いてロックを解除して前に倒せばOKです。 ただし、パッケージトレイを装着している場合には、それも外さなければ邪魔になってしまうので、少し面倒かもしれません。 固定リヤシートのグレードでは、座面を落とし込むことができないため、荷室とシートバックに大きな段差ができてしまいます。 荷室の床を低く設定して通常時の積載性をアップしているためにこのような大きな段差ができているのですが、大きな荷物を積む機会が多い人にとっては大きな問題となりそうです。 居住空間はスライドシートのグレードとそれほど大きな違いはありませんが、荷室の使い勝手には大きな差がありますので、その点はグレードを選ぶ際に実車でしっかり確認しておく必要があるでしょう。
ノーマルシリーズには、ルームランプが一つしか装備されず、マップランプも装備されません。 その代わりに、「Xリミテッド」以上のグレードにはバニティミラー照明(写真左上)が付きます。 インテリアの上質感や使い勝手ではカスタムシリーズより劣りますが、バニティミラー照明をマップランプ代わりに使えば実際に困ることはあまりないでしょう。 なお、「X」以下のグレードではバニティミラー照明が装備されませんが、全グレードで両席バニティミラーが標準装備となっていて、これは軽セダンとしては珍しく、おしゃれに気を使う人にとっては重要なポイントかもしれません。
ノーマルシリーズは、エンジンは3気筒DOHCエンジンの1種類のみです。 スペックは、58馬力/6.6kg・mとなっていて、カスタム系のNAエンジンと同じものなので、タイヤサイズやミッションの違いによる走行性能の差はあるものの、エンジン単体の性能は廉価グレードであっても上級グレードと同じなので、どのグレードを選んでも加速性能に関して不満に思うことはないでしょう。 「Xリミテッド」以上はCVT、「X」は4AT、「L」は3ATまたは5MTと、ミッションはグレードによって違うのですが、すべてのグレードで21.0km/L以上の低燃費を実現しているので、経済性の面でもどのグレードを選んでも安心です。 また、ロングホイールベースでありながら、最小回転半径は旧型とほぼ同レベルの4.2〜4.3mとなっていて、小回り性能も優れています。 それでは、気になる実際の走りについて、早速試乗レポートで紹介したいと思います。
<ここから試乗レポート>
試乗したのは、アイドリングストップシステムを装備し、ガソリン車で世界トップの燃費を実現した「Xリミテッド スマートドライブパッケージ」です。 ノーマル系「ミラ」にはキーフリーシステムは付いていないので、エンジンは普通どおりイグニッションキーを差し込んでスタートさせます。 手元に近いインパネシフトで操作性がよくなったシフトレバーを「D」レンジに入れて車を走らせます。 と、ここまでは普通の車となんら変わりありませんが、信号停車時にこの車の特徴が現れます。 最初の交差点で右折待ちになり、そこでエンジンが停止するのかと思ったら、最初のうちは何の反応もなく、エンジンは動いたままです。 しかし、しばらくそのまま待っていると、突然エンジンが停止してウインカーの電子音だけが車内に響きます。 エンジンが停止しても、サブバッテリーが電源を供給するのでエアコン(送風のみ)やオーディオはそのままです。 エンジンが停止しているわけですから、エアコンやオーディオを消しておけば完全な無騒音・無振動となり、外部からの騒音を無視すれば停車時の快適性はどんな高級車にも勝ります。 むしろ、あまりにも静かすぎて違和感を感じるほどで、無音空間の中で「軽もここまで来たのか」としみじみ感じました。 ただ、しばらくそのまま停止していると、「果たしてちゃんとエンジンがかかるのか」という不安も出てきました。 アイドリングストップシステムが付いていると知って乗っているのでまだ良いのですが、知らずに乗った人は「エンジンが止まった!」とパニックになるかもしれません。 「アイドリングストップ中」などといった表示が出るようにしてあれば、そういった不安も解消され、システムが正常に動いている証にもなりますので、ぜひこれはマイナーチェンジ等で改善してほしい点です。 さて、若干の緊張の中、やっと発進の瞬間がやってきました。 ブレーキに置いていた足を緩めた瞬間「キュルキュル」と専用スターターが作動し、アクセルに足を置いたときにはもうエンジンがかかって車が動き出しました。 走り始めれば、もう普通の車と同じです。 その後は、信号で停止するたびにエンジンが停止し、またアクセルに踏みかえるときにはエンジンがかかるという感じで、慣れてくれば不安も解消され、停車時の無音感を楽しむ余裕も出てきます。 最初に停車からエンジンストップまで時間がかかったのは、おそらくエンジンが温まっていなかったためで、その後は停車後すぐにエンジンがストップするようになりました。 この車のアイドリングストップシステムは、エンジンやバッテリーの状態によって細かく制御されるようになっていて、停車してもエンジンがストップしなかったり、長時間停車している場合などには発進前でもエンジンがかかったりしますので、その点はよく理解しておく必要があるでしょう。 なお、ハザードランプを点けて道端に停車し、シフトレバーを「P」に入れた状態などでも、エンジンは停止します。 この場合は、シフトレバーを「D」レンジに入れると再びエンジンがかかりますので、人待ちなどで一時的に停車する時でも、効率的に無駄な燃料を抑えることができます。 気になる燃費ですが、平均燃費の表示は、16.0km/L前後になっていました。 この車は試乗車で走行条件が良くないと思われるため、エコ運転を心がければおそらく実燃費で20km/L以上はいくのではないでしょうか。 なお、定速走行時など燃料消費が少ない状態のときには、メーター内に上の写真左下のような「ECO」マークが点灯しますので、これを目安にすれば効率的にエコ運転ができます。
さて、ここまではアイドリングストップシステムについて詳しく紹介しましたので、ここからは走りについて紹介します。 まず、エンジンについてですが、一般走行時においては、エンジン音は軽のNAエンジンとしては静かで、振動もほとんど気になりません。 ただ、加速時にはどうしても「グオーン」という軽らしい音が大きくなってしまいます。 これは軽のNAエンジンでは仕方ないことで、許容範囲内ではあります。 音に関しては他の軽と比べて驚くほどの差はないですが、加速に関しては非常にすばらしいです。 一般的な軽のNAエンジンは、アクセルを踏み込むと音ばかりが大きくなって実際の加速は頭打ち感が強くなってしまうのですが、このエンジンの場合は音が大きくなるにつれて加速の力強さも増し、非常にトルクフルなのです。 7000回転付近でリミッターがかかるまでずっと高トルクが続くので、非力さを感じることはありません。 坂道でもけっこうグイグイ上ってくれるので、「軽はターボでなきゃ」と思っている人も、一度この車に乗ってみる価値はあると思います。 急な坂道や高速道路を頻繁に走行する人でなければ、このエンジンで十分と思うはずです。 ミッションがCVTになったことで、走りが非常にスムーズになったことも注目点です。 加速時などに「ヒュイーン」という音がかすかにするのは若干気になりますが、変速ショックがまったくなくスムーズで力強い走りの代償と思えば納得できます。 また、下り坂でエンジンブレーキを使用する際に、シフトレバーを「S」や「B」に入れても「ガクン」とならずに緩やかにエンジンブレーキがかかるので、そういった点でも非常に優れたミッションです。 それから、良い意味で予想外だったのが、コーナリング性能の良さです。 145/80R13という、燃費や乗り心地重視のタイヤを履いているため、コーナリング性能はまったく期待していなかったのですが、ロールはするもののアンダーステアはほとんどなく、上半身が外側に引っ張られるような感覚もほとんどありません。 重心が低く安定感の高いセダンタイプの利点が存分に生かされている感じで、思った以上によく曲がってくれるので感心してしまいました。 「ソニカ」や「セルボ」などのように足回りを硬くしてロールを押さえることでコーナリング性能を高めるのではなく、ボディ全体で踏ん張りながら粘り強く安定感を確保するというセッティングなので、「コーナリングの安定感は欲しいけど硬い乗り心地は苦手」という人でもこの車なら満足できるはずです。 直進時のサスペンションは非常にしっかりしていてフワフワ感がなく、見た目よりもずっと引き締まった印象の乗り心地ですが、決して硬いわけではなく、不快感はまったくありませんでした。 何より、ロングホイールベースによって前後の揺れが少ないのが好印象です。 ロードノイズはやや大きめのように感じましたが、風切り音はよく抑えられているので、全体的な静粛性は平均以上だと思います。 インパネの圧迫感がなく、着座位置が高く視界が良好なため、まるでトールワゴンタイプのような開放感があるのですが、それでいてきちんとセダンタイプの利点である走りの良さも感じられるこの車は、どんなニーズにも応えられるオールマイティな車であると改めて感じました。
いかがでしたか? 燃費、走り、居住性、運転のしやすさなど、軽に求められるすべてを高次元でバランスさせた新型「ミラ」は、まさに「ベーシックセダン」から「軽のスタンダード」に進化したと言えると思います。 2006年の新車ラッシュの最後を飾る車となったわけですが、この車に乗ってみれば、どうして軽の人気がここまで高まっているのかを納得することができると思います。 これからの軽がこの車を基準として開発されるなら、もはや「軽に弱点は無い」と言っても過言ではないのかもしれませんね。 新型「ミラ」は、軽の購入を検討する際にまず最初に乗ってみるべき車と言えるかもしれません。
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