スズキの『ワゴンR』と、ダイハツの『ムーヴ』は、軽自動車の中の永遠のライバルです。
どちらも、広さ、燃費、価格、装備と、すべてにバランスが取れた人気車で、歴史も古く、そのメーカーを代表する軽自動車です。
現在、軽自動車の人気ジャンルといえばハイトワゴンやスーパーハイトワゴンですが、特にハイトワゴンは、なんと25種類もの車が発売されていて、一番の激戦区になっています。
そんな数多くのハイトワゴンの中で、平成10年の規格変更より前から存在しているのは、実は『ワゴンR』と『ムーヴ』だけなのです。
それだけ歴史が古く、ずっと人気車であり続けているのがこの2車種なのです。
その人気は、中古車の台数を見てもわかり、どちらも1万台以上の中古車が流通していて、この2車種がいかに多くの人に選ばれて続けてきたのかが一目瞭然です。
しかし、この2車種、直接のライバルであるにもかかわらず、その車の性格はまったく異なります。
ワゴンRは、広さも燃費も装備も価格も、すべてが優等生レベルであり、突出した部分というのはあまりありません。
デザインも、好き嫌いが分かれにくいオーソドックスなスタイルであり、モデルチェンジをしても基本的なスタイルはほとんど変化がありません。
また、派生車種も基本的にはなく、以前の上級モデルであった「RR」が横長ヘッドランプの「スティングレー」に変わったくらいで、ずっと『ワゴンRといえばこのスタイル』を貫いています。
フルモデルチェンジは約5年ごとで、売れている車種としてはやや長めです。
それに対して、ムーヴは、常に時代の最先端をいく車として開発され、レーダークルーズコントロールなどの軽の常識を超えた先進機能を採用してみたり、LEDヘッドランプや自動ブレーキなどを他メーカーに先駆けていち早く採用してみたりと、とくかく挑戦的です。
デザインも、モデルチェンジのたびに大きく変わり、伝統だった横開きバックドアを上開きバックドアに変更したり、一時期センタメーターだったのをまた通常のメーターに戻したりと、とにかくいろんなことに挑戦して、変化を恐れない姿勢を明確にしています。
さらに、派生車種も多く、『ムーヴラテ』や『ムーヴコンテ』など、遊び心を取り入れた車種も積極的に展開しています。
フルモデルチェンジも、きっちり4年ごとに行います。
どちらも軽自動車のど真ん中のポジションの車であるのに、実は個性とこだわりを持った車であるというところが、非常にユニークです。しかも、方向性がまったく違うというのもおもしろいですよね。
このように明確に方向性が異なるため、ワゴンRに関しては、「どの年式の車を買ってもほとんど同じでおもしろみがない」という意見もありますし、ムーヴに関しては、「あの年式のは好きだけどあの年式のは嫌い」といった意見もよく耳にします。
これほど方向性の異なる2車種が、どちらも人気車種として君臨し続けているというのも、軽自動車のおもしろいところなのかもしれません。
最近はスーパーハイトワゴンの人気が高まってきて、以前ほどの勢いはなくなっているこの2車種ですが、これからも永遠のライバルであり続けることはほぼ間違いなく、軽自動車の進化をけん引していくことでしょう。