HONDA ゼスト
[外観デザイン 外装パーツ インパネ周り シート 荷室&試乗レポ]
ゼストには、アクティブパッケージというものが用意されています。 これは、ワイパブルマット、撥水シート表皮、アタッチメントフック、消臭天井という装備がセットになったもので、「W」および「スポーツ W」に標準装備され、その他のグレード(「N」を除く)ではメーカーオプションとなっているものです。 アウトドアによく出かけるとか、ペットと一緒によく出かけるとか、そういった行動派の人にとっては非常にうれしい装備ではないでしょうか。 「いつもきれいに上品に乗る人にはライフ」「いつもアクティブに車を使いこなしたい人にはゼスト」という明確な位置づけができているような気がしますね。 ルームランプは中央にビルトインされ、アシストグリップも回転収納式で質感も高いですが、ラゲッジルームランプが無いのはちょっと不便かもしれません。 斜め後方の視界はなかなか良いですよ。 試乗レポでもお伝えしますが、この車は車両感覚がつかみやすいので、運転が苦手な人でも苦労しないと思います。
荷室の広さはこのタイプの車としては平均的です。 リヤシートのスライドができないので荷室容量を増やすこともできませんが、1340mmという室内高(タントよりも高い!)による縦方向の余裕を活かせば、便利に使うことができそうです。 床面が樹脂製なので汚れも気にせずに済みますし、シートバックなどにあるアタッチメントフックを利用してオプションのラゲッジネットなどを取り付ければさらに多彩な使い方ができます。 荷室の使用頻度が高いという人は、この車は一度チェックしておくべきでしょう。 床面の下にはアンダーボックスなどは無く、スペアタイヤが入っています。
シートバックを倒し、さらに座面を落とし込むと、このような広大な荷室空間を作ることができます。 床面積も高さも十分にあり、さらに床面が樹脂製なので、自転車を積むとか、タイヤを積むとか、いろいろな使い方ができそうです。 ただ、操作が2段階でやや面倒なのと、フロントシートを少し前にスライドしないといけないのが気になるところです。 実際にこの状態で走ると前席がちょっと窮屈なんですね。 その代わりに低くフラットな荷室を作れるわけですから、そこは我慢というところでしょうか。
この車の積載性へのこだわりがわかるのが大開口のテールゲートです。 床面自体が低い上に、テールゲートの開口を地面から530mmという低い位置からにしてあるため、重いものでもあまり持ち上げずに済みます。 また、開口部の高さは1020mmもあり、背の高い荷物もラクラク積めるのです。 ダイハツの商用1BOXであるハイゼットのスライドドア開口高が1010mmですから、考えようによっては1BOXのような使い方もできる車なのです。
横からの積載性ももちろん考えられていて、リヤドアは79°まで開くので、高い室内高を活かして植木などを積むこともできます。 ルーフが水平に近いので、人の乗り降りもラクです。 ドアを見ていて感心したことがあるのですが、前後のドアサッシュの隙間にちゃんとゴムシールが付いているんです(写真右上)。 軽ではここに隙間ができている車が多いのですが、ゼストはここにもゴムシールがついているので、騒音や雨水などを防いでくれます。 これが、結果的に静粛性の向上やピラー周りの汚れ防止などにつながり、車の耐久性も高まることになります。 あまり派手なメカなどは装備しないですが、こういったあまり見えないような細かい部分までしっかりこだわっているというのがホンダの軽の良いところでもあります。 実車を見る機会があったら、こういった細かい部分もぜひチェックしてみてください。
エンジンは、ライフと同じくツインプラグのi−DSIエンジンで、NA(52馬力/6.2kg・m)とターボ(64馬力/9.5kg・m)の2種類があります。 エンジンのスペックはライフと同じですが、車両重量が880kgから990kgとやや重いため、ライフよりも若干燃費が悪くなっています。 ミッションは4ATのみの設定ですが、すべてのグレードでFFと4WDを自由に選択することができます。 最小回転半径はライフと同じ4.5mですが、14インチタイヤ装着車は4.7mになります。 その他、基本的なメカニズムはライフと共通なので、あとは試乗レポートでお伝えすることにしましょう。
試乗したのは、「スポーツ W」の4WDです。 ホンダの軽は、今まではプリモ店でしか買うことができなかったのですが、ゼストの発売に合わせて、クリオ店やベルノ店(3月以降すべて「ホンダカーズ」に統一)でも買えるようになりました。 そこで、早速ベルノ店で試乗させてもらいました。 エンジンをかけてみると、軽快なエンジン音が聴こえます。 エンジンの音量は驚くほど静かではないのですが、音質が軽くて耳障りにならないので、実際の音量よりも静かに感じます。 ハンドルから手を離すとすぐに届くシフトレバーは操作性に優れ、目線もあまり移動しなくてよいので安心して運転できます。 Dレンジに入れると、やはり3気筒エンジンらしい振動がありますが、振動の幅が小さいというか、振動が柔らかいというか、不快感を感じないところがホンダのエンジンのすばらしいところです。 歩道の段差を下りると、かなりしっかりした足回りであることがわかります。 軽自動車の場合は、一般的には街乗り中心の味付けになっていることが多く、歩道の段差を下りるときのようなゆっくりした動きにはかなり柔らかい乗り心地の車が多いのですが、この車はゆっくりした動きのときもしっかりした乗り心地になっているのが印象的でした。 もちろん、乗り心地が硬いというのともまた違う感じで、例えるなら、日本の高級車とドイツの高級車のような、そんな違いを感じました。 車道に出て加速を始めると、970kgの重いボディでありながら低速から力強い加速をしてくれます。 しかし、その後60km/hに達するまでの中速域になると、ちょっとパワーが抜けてしまったようなストレスを感じます。 高回転を重視したショートストロークのエンジンと、ライバルと比べて100kg弱重いボディは、やはり加速に影響しているようです。 もっとも、試乗車はNAエンジン+4WDという、加速性能においてはもっとも不利なグレードであったので、FFであればもう少し軽快に走るでしょうし、ターボならちょうど中速域のトルクが補われて気持ちよい加速が得られるはずです。 ストレス無く思いどおりの加速を楽しみたいなら、ターボエンジンを検討したほうがよいでしょう。 巡航時のエンジン音は静かです。 上り坂などでエンジン回転数を上げるとエンジン音は大きくなりますが、室内に響くような低音はなく、「シュルシュル」とか「ジュー」というような軽快な音なので、会話の邪魔になるようなことはあまりありませんでした。 ボンネットフードの裏に取り付けられた吸音ボードも効いているようです。 走行中の乗り心地もやはりしっかりしていてフラット感が強く、余計な揺れがなくビシッとしています。 試乗コースが単調だったためカーブの連続などは試せなかったのですが、Uターンや右左折などでもあまりロールがなく安定感のある重厚な走りだったのが印象的でした。 eKスポーツのようにサスペンションを硬くしているわけではなく、しなやかでありながらフワフワしないサスペンションとなっているので、スポーティな走りと快適性の両方を高い次元で求める人にはオススメの車ではないかと思います。 試乗車にはドアバイザーが付いていましたが、それでも風切り音はあまり聴こえません。 やはり、フロントドア上部の2重ドアシールや前後のドアサッシュの隙間に設けたゴムシールなどが効果を発揮しているのでしょう。 ただ、風切り音が静かなぶん、ロードノイズは少々目立ちました。 タイヤの性能もあるのかもしれませんが、全体的に平均以上の静粛性なので、これでロードノイズが静かであればかなり快適な車になると思いました。 ディーラーに戻り車庫入れをしてみましたが、最近の車の中では後方視界も良いほうなので、比較的スムーズに車をコントロールできました。 やはり直線基調の車というのは車両感覚がつかみやすいですね。 前方の視界もとてもよく、ボンネットは思ったほど見えないのですが、運転のしやすさという点では軽の中でも上位に位置すると思います。 走り終えての感想ですが、やはりこの車にはターボエンジンが合うのかなという感じがしました。 もちろん好みの問題もありますが、しっかりしたシートとしっかりしたサスペンション、そして快適な視界と静粛性の高い室内と、それだけ揃えば街乗りだけでなくロングツーリングも楽しみたくなってしまいますので、その素質を十分に発揮するにはターボエンジンのほうがいいのではないかと、私はそう感じました。
いかがでしたか。 発売される前は、単にライフのメカニズムを利用してボディ形状を変えただけの車かと思っていましたが、実際に乗ってみるとライフとはまったく性格の違う車だという印象を受けました。 ロングドライブも視野に入れたスポーティな走りと積載性にこだわったパッケージングで、行動派の人には見逃せない車という感じです。 軽乗用車はすでに30車種を超えるほどに増え、各メーカーとも個性豊かな車を出していますが、このゼストはトータルバランスに優れていながら、既存のどの車種とも違う新たな個性を感じさせる一台と言えます。 これでホンダの軽乗用車は4車種になったわけですが、ゼストは、その中でももっともホンダらしさを感じられる車ではないかと思います。 ホンダ好きの人はもちろんのこと、他メーカーの車に乗っている人もホンダ車に興味を持ったら、ぜひこの車を見に行ってみてください。
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