カーチェック

MITSUBISHI アイ

[外観デザイン 外装パーツ インパネ周り シート 荷室&試乗レポ]

天井 天井はもちろんフルトリムで、明るく上質な雰囲気です。
 ルームランプやマップランプもきれいにビルトインされていますし、アシストグリップも回転収納式なので、非常にすっきりとしています。
 しかし、アシストグリップは助手席のみしか装備されていませんし、マップランプも「G」のみにしか装備されないなど、他のトールワゴンタイプと比べると装備が充実しているとは言えない部分もあります。
 この車は消臭天井を採用していて、イヤな匂いを吸着・分解してくれるため、いつもクリーンな空気を楽しむことができます。
 ほぼ同時期に発売となったMRワゴンも消臭天井を採用しているので、おそらくこれからは軽にも消臭天井の採用が広がっていくでしょう。
 

バニティミラー バニティミラーは大きめですが、運転席のみの装備で、照明も付きません。
 さらに、廉価グレードの「S」になるとバニティミラー無しとなってしまいます。
 これも、最近の軽自動車としてはさびしい装備内容です。
 運転席のみに装備しているということは、女性ユーザーを意識した車ということなのでしょうけど、実際にこの車に興味を持つのは男性ユーザーのほうが多いのではないかという気がしますし、バニティミラーは助手席の人もよく使う装備です。
 最近では両席照明付きバニティミラーを装備する軽も増えていますから、決して安くはない価格設定のこの車がこの装備内容というのはちょっと不満です。

荷室 ラゲッジルームは、床面はかなり広いですが、下にエンジンがあるため床面が高く、また、テールゲートがやや傾斜していることによって実際の容量はそれほど大きくありません。
 テールゲートも小さめですし、重い荷物もかなり持ち上げないといけないので、積載性は良いとは言えず、リヤシートのスライドもできないため、荷物の量に応じて床面積を変化させることもできません。
 ラゲッジルームの使い勝手に関しては、リヤミッドシップエンジンであることのデメリットが出てしまっています。
 しかし、一般的なセダンタイプよりは容量も大きいですし、日常使いには十分な容量なので、一般的な買い物程度の使い方なら不満はないはずです。
 好印象だったのは、テールゲートの開閉がとてもスムーズだったことで、カチッと開いてカチッと閉まります。
 軽自動車では、テールゲートがブルブルしたり閉まりにくかったりといった車も多いのですが、この車はテールゲートが小さめであることも影響しているのか、非常に軽快に開閉できます。
 リヤエンジンであるために、リヤ周りの剛性が高いということもあるのかもしれませんね。

荷室拡大 シートバックを倒せば、このように荷室を拡大できます。
 シートバックは左右分割可倒式ですし、段差もほとんどできないので、その点では使い勝手は良いです。
 また、操作は腰部にあるレバーを引いて倒すだけなので、簡単です。
 レバーがシートバックの上についている車よりは若干操作しにくいですが、リヤシートに座ったままでリクライニングの操作がしやすく、かつ、荷室からも操作がしやすいようにと考えたときには、このポジションがベストでしょう。
 荷室右脇のボックスには、ジャッキが収納されており、スペアタイヤの収納スペースは確保できないので、代わりに後席下にパンク応急修理キットが装備されています。

ボンネット内 フロントにはエンジンはありませんが、ボンネットは開くようになっています。
 ウインドウウォッシャーやバッテリーなどのメンテナンスはこちらでできるようになっているので、リヤにエンジンがあっても日常のメンテナンスで苦労することはないと思います。
 フロントにエンジンのスペースを作らずに済むので、前面衝突に対して理想的なクラッシャブルゾーンを作ることができ、高い安全性を確保しているということです。
 また、サスペンションの設計やタイヤ切れ角などについても、エンジンが無いことによって自由度が増し、ハンドリングや乗り心地などに様々なメリットをもたらしているようです。

新開発エンジン 荷室床の下は、このようになっています。
 ネジを回してこのカバーをとると、エンジンが現れます。
 エンジンオイルの点検などはこちらから行わなければいけないので、頻繁に自分で点検する人にとっては不便ですね。
 しかし、ガソリンスタンドでエンジンルーム内の点検を勧められたときには断りやすいかも(?)
 使い勝手の面ではデメリットも多いリヤエンジンですが、走りや快適性に関してはメリットも多く、それがこの車の最大の特徴でもあります。
 通常、軽自動車ではドライバーとエンジンの距離が近いため騒音が大きくなりがちですが、この車はドライバーからエンジンが遠く、また、リヤシートや荷室床が吸音効果を発揮してくれるため、静粛性が高くなります。
 また、FFの軽自動車はどうしてもフロントが重くなりアンダーステアが強く出てしまいますが、この車はフロントが軽いためアンダーステアが出にくく軽快なハンドリングが楽しめます。
 さらに、上り坂や後席に人を乗せたときでも駆動輪にしっかり力がかかるため、力強く走ることができます。
 それからもう一つ、軽自動車は後面衝突に弱い傾向があるのですが、この車はエンジンが衝撃を吸収してくれるため、後面衝突に対しても有利です。
 この、今までの軽の常識を覆す走りの良さと快適性の高さこそ、この車の最大の魅力だと私は思います。

フルフロアアンダーカバー エンジンは、可変バルブタイミング機構(MIVEC)を採用した新開発の3気筒DOHCインタークーラーターボのみで、NAエンジンは用意されていません。
 スペックは、64馬力/9.6kg・mとなっていて、トルクはターボエンジンにしてはやや控えめになっています。
 トルクを控えめにした分、燃費は良くなっていて、車両重量が900kgもあるにもかかわらず、カタログ燃費は18.4km/Lを達成しています(2WDの数値)。
 ミッションは全車4ATとなっていますが、すべてのグレードで4WDが設定されています。
 ブレーキはフロントに13インチのベンチレーテッドディスクを採用していて、ハイパワーと重いボディをしっかり受け止めます。
 燃料はレギュラー仕様で、燃料タンク容量は35Lを確保しています。
 珍しいのは、アンダーフロアをフルカバー化しているということ。
 軽ではもちろん初ですし、普通車でもフルフロアアンダーカバーを装備する車は一部の高級車などに限られます。
 これは、フロア下を流れる空気を効果的にエンジンへ送るために設けたものとのこと。
 リヤミッドシップエンジンという特殊なレイアウトであることも影響していますが、この車が快適性や耐久性などにもしっかりこだわって造られてるというのがわかる部分です。
 実車を見る機会があったら、ぜひ下回りも覗いてみてください。

<ここから試乗レポートです>

後方の視界 試乗車が用意されたので、さっそく試乗してきました。
 試乗したのは、量販グレードとなる「M」です。
 まずは、ステアリングコラムについているツマミを押しながら回してエンジンをかけます。
 「G」以外のグレードにはキーレスオペレーションシステムが装備されているため、いちいちキーを挿し込む必要がなく、これは非常にラクです。
 エンジン音は、やはりフロントエンジンの車と比べるとかなり静かです。
 ゲート式のシフトレバーはストロークが短く、位置もやや低めなので、慣れるまではちょっと戸惑うかもしれません。
 シフトレバーは操作の確実性を重視したものなので、エンジンをかけてすぐにDレンジにガチガチッと入れてすぐに発進・・・というせっかちな人には向いてないかもしれません。
 Dレンジに入れると、シートからブルブルという振動が伝わってきます。
 まだエンジンが冷えているということもありますが、リヤにエンジンを置いていても、やはり3気筒では振動の大きさは避けられないと感じました。
 ディーラーの駐車場から車道に出るときに、歩道の段差をゆっくりと降りると、なんとも上品で柔らかいサスペンションのセッティングに驚きました。
 試乗車にはアルミホイールが装備されていないのですが、それでもドスンという不快なショックがなく、とてもやわらかくゆっくりとショックを吸収してくれるので、ちょっと感動しました。
 これはサスペンションの設定だけでなく、ボディ剛性の高さも影響しているのだと思います。
 その柔らかいサスペンションは、走り出すと今度は非常にどっしりとした安定感のあるフィーリングに変わります。
 大径タイヤであるわりには路面からの突き上げも気になりませんし、ロールもあまりありません。
 軽ナンバー1の超ロングホイールベースも、やはり安定感のある走りに貢献しています。
 ただ、いくらホイールベースが伸びても、全幅はこれ以上広げられないので、細かい揺れというのはどうしても避けられません。
 軽の中ではトップクラスの安定感を持っていることは確かですが、ホイールベースが小型車を超えるからといって、安定感も小型車を超えているということはないので、その点は期待しすぎないようにしてください。
 さて、新開発の3気筒ターボエンジンの実力ですが、これは期待通りのものでした。
 リヤミッドシップレイアウトであることによって、ドライバーとエンジンの距離が遠く、助手席の人との会話にエンジン音が割り込んでくることがないため、非常に快適。
 さらに、エンジン単体の騒音も低減されているようで、静粛性は軽自動車の中でトップレベルです。
 また、エンジン音は加速時でも不快なこもり音などもなく、全体的に「シュー」と軽い音なのでストレスになりませんし、ターボエンジン特有の「ヒュー」という過給音もほとんど聴こえません。
 最大トルクをやや抑えたエンジンですが、日常域では十分に力強く、これ以上のトルクは要らないと思えるほどでした。
 同じ3気筒ターボエンジンのeKスポーツとは明らかに異なる性格のエンジンで、日常域での爽快感・軽快感・力強さを追求しているように感じました。
 それと、シフトチェンジが非常に素早いのも印象的で、ほんの一瞬カツンとショックがあったと思ったときにはすでにシフトチェンジが終了していて、このミッションも軽快な走りに貢献しています。
 これでマニュアルモードが付いていたらもっと楽しいと思いますね。
 そして、一番感動したのは、ハンドリングの軽さです。
 フロントに重量物であるエンジンを積んでいないため、他の軽と比べると明らかにフロントが軽く、Uターン時などはボディ全体が軽くなったような感覚でスッと気持ちよく曲がれます。
 軽の場合は、どうしてもフロントヘビーの車が多いため、カーブではアンダーステアを警戒してやや緊張しますが、この車にはそれがありません。
 ロングホイールベースで最小回転半径も大きめなのに、自分から切れ込んでいくような感覚で曲がってくれるため、非常に小回りの利く車であるような感じがします。
 軽快なハンドリングを求める人は、絶対にこの車には試乗してみるべきでしょう。
 フロントウインドウがかなり下まで伸びていて前方視界がとても良いことも、ハンドリングの気持ちよさを倍増させています。
 風切り音やロードノイズも、「サー」という高い周波数で静かに聴こえる程度で、これも軽の中ではかなり優秀なレベル。
 エンジンをリヤに置いたことで、遮音に対しても理想的な対策を施すことができているのではないでしょうか。
 走りに関してはほとんどパーフェクトと言ってもいいくらいの出来だと思いますが、ただ一つ気になるのは車両感覚のつかみにくさです。
 上の写真のように、斜め後ろ方向の視界が悪く、丸みのあるデザインであるため、車庫入れはかなり緊張します。
 また、フロントもボディがどこまであるのかわかりにくく、狭い路地や駐車場などでは最初のうちは苦労するでしょう。

 いかがでしたか?
 斬新なデザインと特殊なレイアウトを持つ車なので、他の車にはない魅力があると同時に普通の軽自動車とは違って戸惑う面もあるかもしれません。
 しかし、全長も全幅も決められている軽自動車枠の中で、これだけ個性的な車が誕生したというのはユーザーにとってうれしいことだと思います。
 新開発エンジンとリヤミッドシップレイアウトという思い切った試みによって、今までの軽とは一味違う走りや快適性を実現しています。
 特に、居住性よりも走りや静粛性などを優先したいという人は、絶対に候補に入れるべき車だろうと思います。
 価格がやや高めなので購入には慎重になるかもしれませんが、軽自動車を検討する際には一度は見ておく価値があると思いますよ。
 きっと軽自動車の新たな可能性を感じることができると思います。


  

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