SUZUKI セルボ
[外観デザイン 外装パーツ インパネ周り 収納&シート周り 荷室&試乗レポ]
居住スペースをそれほど広くとっていないため、荷室はなかなか広いです。 おそらく、メーカーは2人乗車+荷物という使い方をメインに考えて開発したのではないでしょうか。 これだけの広さがあれば、まず不満に思うことはないはずです。 荷室が広めなのには、後面衝突への対応という意味もあるようです。 この車は、後面衝突への対応として、リヤシートバックの強度も高めてあるそうで、その性能が十分に発揮されるためにも荷室を広めにとっているのかもしれません。 なお、荷室の床下にはアンダーボックスなどはなく、スペアタイヤが収納されています。
シートバックを倒すと、このように荷室を広げることができます。 操作は簡単で、ショルダー部のレバーを引いてロックを解除してから倒すだけです。 ヘッドレストを外す必要もありません。 左右独立で倒すことができるので、3名乗車時にも対応できます。 若干角度はつきますが、目立った段差はないので、使い勝手は良いと思いますし、広さもこれだけあれば十分でしょう。
天井は、消臭天井となっていて、ニオイを吸着して分解してくれますので、いつも快適な空気環境を保てます。 室内照明はこのルームランプのみです。 きれいにビルトインされていてデザインは良いのですが、マップランプやラゲッジランプがないのはさびしいですね。 夜間によく乗る人は、ちょっと不便に感じるかもしれません。
バニティミラーは全車標準装備ですが、運転席のみの装備となり、照明も付きません。 インテリアの上質感に対して、装備はちょっと簡素化しすぎではないかという気もしますね。 好みの問題もあると思いますが、せめて上級グレードはもう少し装備を充実させてもよかったのではないかという気がします。 アシストグリップは、回転収納式となっています。
最近はフロントガラスの傾斜が強い車が多いですが、その場合に気になるのが斜め方向の視界です。 初代「MRワゴン」がデビューしたころに比べればだいぶ慣れてはきましたが、それでも車種によって気になる場合とならない場合があります。 「セルボ」の場合は、ピラーが太めで頭上に近いため、やはり圧迫感がありました。 衝突安全性能は優れていそうですし、ホイールベースが長くなく、最小回転半径が4.1〜4.4mと小回り性能が優れているので、実際の取り回しには苦労しないのかもしれませんが、初めて乗るとやはりその圧迫感が気になります。 これからはもっとこういう車が増えていくのでしょうけど、人間のほうがそれに慣れていかないと仕方ないのでしょうか。 ピラーの付け根の部分に丸い出っ張りがありますが、ここは、「TX」の場合にはツィーターが設置される場所です。 ちょどいい具合にフロントガラスに反射して音が飛んでくるようになっていて、傾斜の強いフロントガラスをうまく利用しています。
エンジンは、3気筒DOHCと3気筒インタークーラーターボの2種類で、基本的にメカニズムは「MRワゴン」と同じと考えてよいようです。 インタークーラーターボは、60馬力のライトプレッシャーターボで、パワーよりも自然なフィーリングや燃費を重視したエンジンです 今のところ64馬力エンジンは用意されていませんが、他車の例からすれば、後にハイパフォーマンスモデルが追加される可能性は否定できません。 車両重量は810kg(ターボ車の2WD)となっていて、カタログ燃費は、19.8km/L(同)と、「ソニカ」ほどのインパクトはないまでもなかなかの低燃費を実現しています。 ミッションは全車4ATのみで、4WDはすべてのグレードに設定されています。 駆動系は特に新しいニュースはないのですが、サスペンションやステアリングの設定はセルボ専用にチューニングされ、よりキビキビと走れるようになっているということで、早速その気になる走りを確かめてみましたので、レポートします。
<ここから試乗レポート>
試乗したのは、最上級グレードとなる「TX」です。 まず、エンジンスタートですが、車内にリモコンを置いているため、キーを挿し込むことなく、つまみをひねるだけでエンジンがかかります。 このキーレススタートというのは本当に便利ですし、夜間に鍵穴を探したりキーで傷をつけてしまったりする心配もないので、全車に標準装備されているのはとてもありがたいです。 アイドリング時は、エンジンが冷えていたこともあり、やや低音の騒音と大きめの振動を感じます。 この車は静粛性に関してもこだわって作られたということですが、この時点では特にそれを感じることはありませんでした。 ゲート式のシフトはやや重めの操作感で、最初のうちは操作しにくく感じるかもしれませんが、上質なシフト周りのデザインとも相まって、ワンランク上の車に乗っているような雰囲気になれます。 歩道の段差を下りると、非常に柔らかくショックを吸収してくれますが、そのサスペンションはスピードを上げていくとだんだん締まってくる感じで、60Km/hくらいで走っているとけっこう硬く感じます。 足回りは、基本部分は「MRワゴン」などと同じですが、この車専用にチューニングされたことによって、やや柔らかめの乗り心地が多いスズキ車の中では異色といえる硬めの乗り心地となっています。 ただ、ドスンと突き上げてくるような感覚ではなく、軽快でありながらガツガツと路面の凹凸を拾う感じで、「ソニカ」のような重い衝撃を受ける硬さではありません。 これは、ホイールサイズを14インチに止めたおかげなのかもしれません。 道路状態の悪いところでは若干揺れも気になりますが、重心は低いので上半身が揺すられるようなことはありません。 この安定感には、もちろんセミバケットタイプでホールド性の高いシートも貢献しています。 カーブでは、「ソニカ」のように「意地でもロールさせないぞ」という攻撃的なものではなく、適度にロールさせながら希望のラインを保つ感じで、タイヤがよく踏ん張っている感じが伝わってきます。 単純な言い方をすると、「ソニカ」が「コーナーを攻める」という感じであるのに対し、「セルボ」は「コーナーをパスする」という感じです。 加速に関しては、やはりライトプレッシャーターボであるため、強烈な加速感というのはありませんが、低速から十分なトルクがあるため非常に扱いやすいです。 アクセルを踏んだ分だけ加速してくれる感じですし、過給音もほとんどしないので、ターボであることを意識することのないエンジンです。 加速時の音は「グォーン」とやや大きめですが、巡航になるとかすかに「ブーン」と聞こえるくらいで静粛性は高いほうです。 グリップ重視のタイヤを履いているわりにはロードノイズも小さいですし、滑らかなボディ形状やフロント上部の2重ドアシール構造などによって風切り音がほとんど聞こえないのが好印象でした。 そして、期待のマニュアルモード付きシフトですが、Dレンジからレバーを右に倒してシフトアップをしていくと、クセのない加速感のエンジンと4ATの相性がとてもよく、4速でもけっこう楽しくスムーズな加速ができることに予想以上の悦びを感じました。 また、「ソニカ」や「R2」は減速時にCVTの音が気になるのですが、この車はミッションの音が気になることはなく、減速時もエンジン音だけが聞こえるため、スポーティな雰囲気が味わえました。 ただ、レバー操作が重く、「カチカチ」と決まる感じではないので、あまり素早い操作には向いていないように感じました。 また、変速の反応も遅めで、安全・安定志向の味付けであるように感じました。 ちなみに、無理な変速をしようとすると「ピピッ」と車から怒られちゃいますよ。 全体の印象としては、足回りに関してはスズキの車の中ではもっともスポーティな存在であると思いますが、加速感などについては上質さを優先させた感じで、肩に力の入らないスポーティセダンという感じでした。 マニュアルモード付きATを装備する車としては、他に「ソニカ」「コペン」「R2」「R1」がありますが、この「セルボ」は、それらとはまた違った「大人のスポーツ」を感じさせる車となっているように感じました。
いかがでしたか。 今までの軽とは違う上質感を目指した「セルボ」は、確かに軽の枠を超えた雰囲気を持っています。 しかし、すべてに豪華なのではなく、上質さを身近な価格で手に入れることができるというのがこの車の一番の特徴なのではないでしょうか。 この数年でセダンタイプの車種が一気に増えて、競争はさらに激しくなっているように思いますが、この車は、そのどの車ともライバルとなり得る車のような気がします。 100万円程度から買える身近な価格と、リッターカークラスのコンパクトカーとも互角に勝負できる洗練されたデザインを併せ持つ「セルボ」は、また新たなジャンルを開拓した車と言ってもよさそうです。
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