SUZUKI ワゴンRスティングレー
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シートも、「スティングレー」専用のものです。 普通の「ワゴンR」のシートは、すべてが平均的でサイドサポートがしっかりしているのが印象的でしたが、「スティングレー」のシートはサイズが大きめで座り心地が柔らかく、大きく包み込まれるような感覚の座り心地です。 シート生地は、ざっくりした肌触りのブラックとブルーのポイントが散りばめられた生地の2種類を組み合わせています。 シートのスライドは、1cm刻みで24段階に細かく調整でき、シートリフターやチルトステアリングも全車標準装備と、誰でも最適なドライビングポジションが得られるように配慮されています。 この点も、シートリフターの設定がない普通の「ワゴンR」と違う点で、普通の「ワゴンR」の装備を悪くして「スティングレー」を買わせようとしているのではないかと思うくらいに、装備の差が大きくなっています。 なお、ライバルの「ムーヴ」は、チルトステアリングやシートリフターなどがオプションとなっているので、その点では「スティングレー」のほうが親切ですね。 こうなると、おそらく「ムーヴ」もマイナーチェンジで標準装備化することになると思いますが、スズキとダイハツの考え方の違いがよく表れているのが、メーカーオプションの設定です。 「ムーヴ」には様々なメーカーオプションが設定されていますが、「スティングレー」には、ESPとオーディオレスという2つしかメーカーオプションが存在しません。 ということは、逆の言い方をすると、「スティングレー」はあらゆるものが標準装備となっているので、メーカーオプションを選択して価格が跳ね上がってしまうという心配がないのです。 「ムーヴ」と「スティングレー」の最上級グレードはそれぞれ155万4千円と同価格ですが、「スティングレー」には先ほどのシートリフターなどのほかに、6エアバッグやオートライトやハイグレードオーディオやプッシュスタートボタンなどもすべて標準装備となっているため、「ムーヴ」にこれらの装備をオプションでつけることを考えれば、かなり割安感があるのです。 もちろん、部分的に見れば「スティングレー」のほうが装備面で劣っている部分もあるのですが、お金のかけ方が実に上手く、単純に目立つ装備を比較するとかなりお買い得に感じます。 これこそ、スズキの得意とする戦略であり、その本領が存分に発揮された車であるといえます。
センターアームレストは、最近の軽の中ではやや小さめです。 一人で使うぶんには十分な幅がありますが、長さはもう少し欲しいところです。 高さもやや低めですが、ドアアームレストとの位置関係は自然なので、使い心地はまずまずといったところです。 「スティングレー」は、普通の「ワゴンR」とは違い、収納ボックス付きとなっています。 このフタがずいぶん薄いので、使い心地は普通の「ワゴンR」より硬い感じです。 収納ボックス内に段差を設け、収納物が動きにくいようにしているところはユニークですね。
普通の「ワゴンR」のページでも紹介しているとおり、後席の居住性は非常に良くなっています。 室内長は1975mmとなり、旧型より125mmも拡大されているので、足元空間はかなり余裕があります。 「ムーヴ」の2110mmの室内長には遠く及ばず、それと比べてしまうと平凡な広さに思えてしまいますが、旧型のように「もうちょっと広かったらな」というような感覚はなく、十分すぎる広さが確保されています。 後ろ上がりのルーフによって、前席と違って頭上空間も余裕があり、快適にくつろげる後席空間となっています。 また、後ろ上がりのルーフに合わせて座面もフロントシートより高くなっているので、前席のシートバックが相対的に低くなり、見晴らしが良くなっています。 トールワゴンの中には、十分な広さを確保していながら、前席のシートバックが壁のように目の前に広がっているために実際より狭く感じてしまう車もありますが、この車の場合は前方の見晴らしが良いため、逆に実際の広さ以上に広く感じます。 ルーフの傾斜は、単にデザイン上の理由だけでなく、この後席の開放感を実現するためでもあったんですね。 シートは、フロント同様に柔らかめで、クッションの厚みが比較的たっぷりあり、体をしっかり包み込んでくれる感じです。 シートバックの幅が拡大されたことで、リヤシートにしては肩周りのサポートもある程度しっかりしていますし、太ももの包まれ感も軽のリヤシートにしては上々です。 「スティングレー」の後席は、圧倒的な広さだけを追求するのではなく、視覚的な気持ちよさや座り心地のよさなど、本当の意味での快適さを追求し、それを見事に実現しています。
便利な左右独立シートスライドはもちろん新型にも受け継がれ、スライド量は25mm拡大して160mmになりました。 ライバルの「ムーヴ」が255mmのスライド量なので、それと比べるとインパクトはありませんが、実用上はこれで十分でしょう。 何より、左右一体スライドの「ムーヴ」よりもフレキシブルな使い方ができるというのは強みです。 ただ、場合によっては左右同時にスライドさせたい場合もあるので、左右独立と左右一体の切り替えができればさらに便利ですね。 また、スライドが少々重いので、もう少し軽い力で操作できるように工夫してもらえれば完璧です。 ロングホイールベース化とリヤクォーターウインドウの廃止によってドア開口を拡大し、「パレット」や「ゼスト」並みに低い345mmというステップ高を実現したことにより、後席の乗降性も格段に向上し、本当にスムーズに乗り降りできるようになっています。 ステップの段差もほとんどないですし、後席のフロアもほぼフラットになっているので、どこかに足が引っかかるようなこともありません。 あとは、前席下の足入れスペースの幅がやや狭いことと、リクライニングの角度があまりつけられないことが改善されれば、さらに快適な後席となるでしょう。
フルフラットは、もちろんOKです。 シートを前にスライドさせ、ヘッドレストを外せば、このように簡易ベッドのできあがりです。 普通の「ワゴンR」よりもシートが柔らかく、サイズもゆったりしているため、さらに寝心地が良くなっています。 アームレストが小さめなので、多少隙間はできてしまいますが、小休憩なら問題ないはずです。
この助手席は、スズキのトールワゴンの特徴です。 座面を持ち上げると、取っ手のついた助手席シートアンダーボックスがあり、そのまま持ち出せるようになっています。 旧型よりも少し浅くなってしまっているようですが、すべてのトールワゴンに共通して装備されているのがいいですね。 また、その状態でシートバックを前倒し(写真右上)することもできます。 これで、シートバックをテーブル代わりに使ったり、長尺物を運ぶ際などに荷室の延長として使ったりできますし、後席からの見晴らしを良くすることもできます。 この前倒し機構も「ムーヴ」にはない装備で、ここも両車を比較する際のポイントになるでしょう。 シートバックには、ポケットと回転格納式のフックが装備されています。
「スティングレー」のドアトリムは、すばらしいの一言です。 普通の「ワゴンR」でも十分に質感が高いのですが、「スティングレー」にはさらにシルバーガーニッシュが追加されていて、軽自動車とは思えない高級感があります。 このガーニッシュはインパネからつながっていて、前席を包み込むようなイメージになっています。 その雰囲気は、まるで高級セダンのようです。 さらに、ディーラーオプションでウッド調やブラックウッド調やヘアライン調のガーニッシュまで用意されていて、まさに高級車の質感を演出することも可能となっているのです。 ドアスピーカーにもシルバーガーニッシュをあしらい、インナードアハンドルもメッキ。 パワーウインドウスイッチパネルはグロスブラックで、腕が触れる部分はクロス張り。 そして、ドアアームレストもかなり幅広なので、しっかり腕を置いて体を安定させることができます。 ドアポケットがやや小さめなことを除けば、質感も使い勝手も完璧なドアトリムです。 ウエストラインが高めなのでこの高級なドアトリムがしっかり視界に入り、特に助手席は軽自動車とは思えない高級感に包まれています。
リヤドアトリムも、フロントと同じイメージでデザインされていて、質感が高いですが、さすがにシルバーガーニッシュは省略されています。 フロントは包まれ感を強調するためにシルバーガーニッシュを設けているのであって、広々感を重視しているリヤではその必要性はあまりないし、コスト面を考えても無難でしょう。 それでも、スピーカーのシルバーリングはちゃんと付いていますし、フロントと同じクロス張り、フロントよりは狭いもののそれでも十分な幅を確保しているドアアームレスト、そしてその上に設けられたパワーウインドウスイッチなど、しっかりポイントを押さえてあるので、質感も使い勝手も非常に良いです。 フロント同様にドアポケットが小さいことだけが気になりますが、ドリンクホルダーも完備していますし、ほぼ不満のないドアトリムです。
「TS」には、さらに高級な専用装備があります。 インパネからドアトリムに続くシルバーガーニッシュが、夜間はブルーに発光して心地よい包まれ感を演出してくれるのです。 実際には、シルバーガーニッシュの上にほんの少し隙間があって、そこから青色LEDの光をシルバーガーニッシュに反射させるという仕組みですが、この幻想的な雰囲気はなかなか他の軽では味わえません。 メーターのブルー照明と合わせ、青い光が前席を包み込む光景は、クールで幻想的。 昼間だけでなく、夜間も高級感を味わえるんです、この車は。 実は、これに似たアイデアは、先に発売された「ムーヴコンテカスタム」にも採用されているのですが、「スティングレー」のほうが発光範囲が広く、デザインも上質であるため、ダイハツは悔しい思いをしているかもしれません。
LEDイルミネーションを点灯させて、写真を撮ってみました。 昼間なのでわかりにくいですが、シルバーガーニッシュの上の隙間がほんのり青く点灯しているのがわかりますか? こんな凝った仕掛けを軽に採用するとは、本当に恐れ入ります。 LEDイルミネーションは、インパネにあるスイッチをONにした状態でライトスイッチをONにすると点灯します。 ライトスイッチを「AUTO」の位置にしておけば、夜間はもちろん、トンネルの中などでも自動点灯してくれますよ。
LEDイルミネーションは、フロントスピーカーにも付いています。 スピーカーそのものも「見せるデザイン」になっていて、昼間でも軽のスピーカーとは思えない質感ですが、夜間はこれに青色LEDが発光して幻想的な雰囲気を演出してくれるのです。 軽自動車のインテリアもついにここまで来たかと、本当に驚いてしまいます。
最後は、荷室と試乗レポートです。
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