SUZUKI ワゴンRスティングレー
[外観デザイン 外装パーツ インパネ周り シート周り 荷室&試乗レポ]
インパネは、普通の「ワゴンR」とはかなり雰囲気が違います。 センターパネルのデザインがまったく違うというだけでなく、なんとグローブボックスの形状まで違います。 さらに、ドアトリムの形状まで異なり、今までにない差別化が図られています。 旧型との違いを挙げるときりがなく、むしろ変わっていないところを見つけるのが難しいくらいですが、一番の違いは、やはりシフトレバーがコラムシフトからインパネシフトに変更されたことでしょう。 シルバーのガーニッシュで縁取りされたグロスブラックのセンターパネルや、インパネからドアトリムにつながるシルバーガーニッシュなど、いままでにない質感を持つインパネは、まさに軽の高級車で、完全に普通車の質感に追いついています。 ルーフが前方に行くほど低くなっていて、ガラスの上下が狭いため、他のトールワゴンと比べると包まれ感が強いですが、だからこそこの圧倒的な高級感のインテリアが目に入ってきます。 このインテリアの質感を楽しむために、あえて広さよりも包まれ感を強調しているのかと思うほどです。 最近のトールワゴンとしてはやや低めの室内高には賛否両論あると思いますが、頭上空間を求めるなら「パレット」があるわけで、このほどよい包まれ感もなかなか落ち着くものですよ。 旧型よりも30mm低く、全高の低い「ムーヴ」と比べても35mm低い1275mmの室内高と、旧型と同じ数値で、先にモデルチェンジしている「ムーヴ」より55mm狭い室内幅が表しているとおり、空間の広さでは「ムーヴ」より劣っている感じがします。 しかし、インパネの奥行きを抑えて平面的なデザインにしているため、足元の広々感は特筆もので、左右のウォークスルーがスムーズに行えます。 高級感のあるインテリアと足元周りの広々感の「スティングレー」を取るか、上半身の広々感と前後方向の伸びやかさの「ムーヴ」を取るか、そこが両車を比較するときの大きなポイントになるでしょう。
インテリアは、隅々まですべてに高級感が漂っています。 特に、この自発光式メーターは他を圧倒する高級感です。 スズキは自発光式メーターの採用に積極的で、初代「MRワゴン」に軽で初めて採用し、その後「ワゴンR」や「パレット」の全車に採用を広げました。 ダイハツやスバルも自発光式メーターを採用していますが、廉価グレードまで全車採用を進めているのはスズキだけで、デザインも非常に凝っているのが特徴です。 メッキリング付きの3連メーター、青い光が漏れているように見える演出、20km/h刻みで青く発光するスピードメーターの目盛り、ホワイト発光の文字や液晶ディスプレイなど、これほどまでに凝った演出のメーターはほかになく、軽自動車のレベルを超えた高級感があります。 エンジンスタートボタンを押してエンジンをかけると、目盛りが先に発光して赤い指針が一度振り切れてから全体が発光するという演出も、軽自動車らしからぬ質感です。 さらに、瞬間燃費、平均燃費、航続可能距離といった情報の切り替え表示も可能となっていて、機能も質感も最高のメーターと言っていいでしょう。 なお、他社のマルチインフォメーションディスプレイと違い、メーターには外気温の表示機能がありませんが、代わりにエアコンのディスプレイに外気温を表示できるようになっています。
スズキは、標準装備のオーディオにもこだわるメーカーで、この「スティングレー」のオーディオもすごいものが装備されています。 まずはそのデザインですが、グロスブラックのパネルが非常にきれいで、さらにCDスロット部やパネルサイドなどにシルバーのアクセントを用いることでクールで上質な雰囲気に仕上げています。 基本的なデザインは「パレット」と同じに見えますが、「パレット」にはこのシルバーのアクセントがありませんでしたし、また、中央のボリュームダイヤルもアルミ削り出しのような質感に変わっているので、さらに高級感がアップしているのです。 この高級感は、他車を圧倒しています。 でも、すごいのはデザインだけではありません。 「X」と「T」では、6スピーカーが採用されていて、それでも十分に贅沢ですが、「TS」には、なんとセンタースピーカーやサブウーハーまで採用した8スピーカーが装備されています。 オーディオは、「スティングレー」の室内音響特性に合わせた専用チューニングで、しかも、ツインラウドネス機能までも搭載しているのです。 車で音楽を聴いていると、停車時にはちょうどよい音量でも、走り出すと聴こえにくくなり、走っているときに合わせると停車時にうるさくなってしまい、音量調整がわずらわしく感じるときがあります。 しかし、このオーディオなら、ツインラウドネス機能が音量や音質を車速に応じて自動的に調整してくれるので、そんなわずらわしさから開放され、常に心地よい状態で音楽を楽しめるのです。 さらに、音量やラジオのチャンネルなどは、ハンドルから手を放さずにステアリングスイッチでも操作できます。 そのステアリングスイッチには、ミュートボタンまで装備していて、一時的に音量をゼロにしたいときに非常に便利です。 「パレット」と違ってルーフスピーカーは装備していないので、スピーカーの数は軽最多ではありませんが、パネルの高級感や機能などをトータルで考えれば、軽自動車の中でもっとも高級なオーディオシステムと言ってもいいでしょう。 実際にFMラジオを聴いてみましたが、前方定位で高音がはっきりしていて、サブウーハーによるしっかりした低音や各スピーカーの存在がわからないほどの包まれ感など、ハイグレードの名にふさわしいサウンドを奏でてくれました(写真は「T」のオーディオです)。
エアコンは、全車プッシュ式のフルオートエアコンで、抗アレルゲン+カテキンエアフィルター付となっています。 快適性が高いのはもちろんですが、注目なのはその質感の高さです。 オーディオパネルと同じマテリアルのパネルに、外気温も表示できる大きなディスプレイと、メッキリングの付いた大型ダイヤルを採用し、最高の質感といっていい仕上がりになっています。 「ムーヴ」のようにステアリングスイッチで操作できれば機能的にも最高でしたが、質感ではこちらのほうが勝っています。 このシフトレバー周りは基本的に「パレット」と同じイメージなんですが、少し違う部分があります。 それは、まず、シフトレバーのボタンがメッキになっていることと、シフトの「D」レンジの下が「M」になっていることです。 「M」とは、マニュアルモードのことで、なんとこの車にはパドルシフトが付いているのです(ターボ車のみ)。
パドルシフトとは、ハンドルの裏側にレバーがあって、それを操作することで自由にシフトチェンジができるというもので、軽では初の装備となります。 ウインカーレバーの手前に見える「+」と書かれたレバーと、ワイパーレバーの手前にある「−」と書かれたレバーが、そのパドルシフトです。 シフトレバーを「M」の位置にして、「+」のレバーを引くとシフトアップ、「−」のレバーを引くとシフトダウンします。 過去にも、スバルの「プレオ」がステアリングスイッチによるシフトチェンジを可能にしていたことがありましたが、レーシングカー感覚で操れるパドルシフトというものは、普通車でも採用車種はまだそれほど多くありませんし、軽ではなかなか採用されませんでした。 これも、CVTの採用による恩恵のひとつですが、「ムーヴ」はCVTを採用していながらマニュアルモードは搭載していないので、この点は「ムーヴ」に対する大きなアドバンテージとなります。 7速マニュアルモード付CVTというのは、すでに「ソニカ」や「セルボ」などにも採用されていますが、それらはシフトレバーを直接操作する必要があるのに対し、この車はステアリングを握ったままで操作できるため、より素早く安全にシフトチェンジができます。 しかも、わざわざシフトレバーを「M」に入れなくても、「D」レンジのままでパドルシフトを操作しても一時的にマニュアルモードになるように設定されています。 つまり、シフトレバーをまったく操作しなくてもマニュアルモードを楽しめるのです。 この設定によって、ハンドルを握ったままで瞬時にシフトダウンをすることができ、シフトダウンをしたいと思ったその瞬間にシフトチェンジが可能なのです。 また、さらに賢いことに、「D」のままでマニュアル操作をしたあとに、しばらくそのまま走行していると勝手に「M」から「D」に戻ってくれます。 CVTのマニュアルモードで走っていると、どきどき「D」に戻すのを忘れて高回転のまま走ってしまったり、毎回シフトを「D」に戻すのが面倒だったりすることがあります。 しかし、この車の場合には、一時的にマニュアルモードを楽しんだあとは、そのまま放っておけば勝手に「D」に戻るので、シフト操作のわずらわしさがなく、戻し忘れの心配もありません。 もし、勝手に「D」に戻るのがイヤなときは、シフトを「M」にしておけばマニュアルモードに固定されますので、問題ありません。 「スティングレー」のマニュアルモード付CVTは、不便さが一切なく、これまでの軽の中でもっとも完成度の高いものになっています。 なんといっても、「プレオ」が生産終了となった今では、トールワゴンで唯一の7速マニュアルモード付CVTなのですから、それだけでも大きな魅力があります。 本革巻きでオーディオスイッチ付きのステアリングにパドルシフトまで付いて、これはもう本当に高級車です。
普通の「ワゴンR」とグローブボックスの形状まで異なるのには驚きました。 普通の「ワゴンR」では、フタ無しのトレーの下に容量の小さいグローブボックスが装備されていますが、「スティングレー」ではグローブボックスを大容量化し、その中を2段に分けています。 これによって、見た目も使い勝手も容量も両車でまったく異なっているのです。 新型「ワゴンR」は、このように「スティングレー」を特別扱いしているところが目立ち、メーカーも「スティングレー」をメインに売りたいと考えているように見受けられます。 アッパーボックスにはCDを6枚収納可能。 カップホルダーは、旧型のインパネ中央からエアコン吹き出し口の下に移動し、プッシュオープン式できれいに格納されるようになりました。 質感が高くなり、エアコンの風で保冷・保温もできるようになるなど、やっとダイハツに追いついた感じがします。 普通の「ワゴンR」のほうは、このカップホルダーのプッシュオープンの勢いが弱く、結局手でアシストしてあげる必要がありますが、「スティングレー」のカップホルダーはワンプッシュでちゃんと全開するようになっています。 こんなところまで差別化するなんて、メーカーはよほど「スティングレー」のほうを売りたいんですね。 「ムーヴ」にはカップホルダーのシンボル照明が付いていますが、「スティングレー」には照明はありません。
運転席側のドリンクホルダーも同じくワンプッシュオープン式です。 エアコン送風口はぴったり閉じることができるので、左右の人で体感温度が異なる場合にも、エアコンの効き具合を調整できます。 その、送風口の左下にあるのが、キーレスプッシュスタートシステムのエンジンスイッチです。 すでに「パレット」でも採用されているものですが、軽で標準装備されている車はまだ珍しく、優越感に浸れるアイテムです。 スイッチにはメッキリングも付いていて、質感までちゃんと考えてあります。 使い方は簡単で、電子キーを身につけておけば、ブレーキを踏んでこのスイッチを押すだけでエンジンがかかります。 エンジンを止めるときも、このスイッチを押すだけです。 これも全車に標準装備となっていて、オプション装備となっている「ムーヴ」よりも先進的です。 電子キーを身につけてブレーキを踏むと、メーター内のインジケーターが点灯してエンジンスタートの準備ができたことを知らせてくれますよ。 インパネ下部にもフタ付きの収納が用意されています。
実際に助手席に乗ってみて感心したことがあるのですが、助手席の足元スペースがゆるやかに傾斜していて、自然に足を置けるように配慮されているのです。 運転席にはどの車でもほとんどフットレストがあるので、ドライバーは常に体を安定させられるのですが、助手席の足元スペースというのはあまり考えられていない車が多く、特に軽ではその傾向が強いので、どうしても軽自動車の助手席は足を踏ん張れずに体が安定しません。 軽自動車の助手席の床は、一般的には水平で、奥のほうで急に角度がついてる場合が多いですよね。 ところが、この車は、床の途中から前方に向けて緩やかに床が傾斜していて、自然に両足を踏ん張れるように絶妙な角度がつけられているので、体がとても安定します。 写真では汚れ防止の紙が敷いてあるのでわかりにくいと思いますが、実車を見る機会があったら、ぜひ助手席にも座って足を踏ん張ってみてください。 軽自動車は、スペースの都合上どうしても運転席優先で作られていることが多いのですが、この車は助手席の快適性も徹底して高めてあるのが特徴で、これなら助手席で長時間過ごしても苦になりません。 新型「スティングレー」は、セカンドカーとしてだけでなく、ファーストカーとして使っても不満のない車を目指しているのがわかりますね。
次は、シート周りを中心に見ていきます。
|