(2012/11〜) 取材日:2011/11/3
HONDA Nワン(N-ONE)
[外観 外装パーツ インパネ周り シート周り&収納 荷室・試乗レポ]
荷室は床面が思ったより広いですが、リヤが傾斜しているので容量はそれほどありません。 また、リクライニングも2段階ですしスライドもできないので、荷物の量に応じてフレキシブルに変化させることはできません。
荷室の床下にはさらに収納スペースがあります。 比較的大きめのスペースなので、いろいろと使えそうです。 驚くのは、床下の見えないスペースなのに、鉄板むき出しじゃなくちゃんとフルトリムになっているということです。 この車は、こういう見えないところまでしっかり普通車並みの造りにしてあるんです。 こういったところを見ると、ホンダが軽に本腰を入れているということがよくわかりますね。
荷室を拡大したいときは、シートバックを倒せばこのようにフラットになります。 段差がなく、荷室の床板もしっかりしていますので、大きめの荷物も安心して積めそうです。 ちょっと気になるのは、シートバックを戻すと座面もチップアップした状態になるので、わざわざ座面を戻すという作業が発生することです。 このあたりは、他のトールワゴンのほうが使い勝手が良いですね。 この車は、サイズ的にはトールワゴンですが、使い勝手の面ではセダンタイプと考えたほうがよいでしょう。 そのぶん、他のトールワゴンよりプレミアム感はあるので、利便性かプレミアム感か、どちらを優先するかで、この車の評価は大きく分かれるかもしれません。
バニティミラーは、フタは大きいのですが鏡面はあまり大きくないです。 また、照明もつきません。 室内照明はフロントとリヤにひとつずつルームランプがついているのみで、このへんにはあまりこだわりがないようです。
エンジンは、DOHC3気筒で、58馬力/6.6kg・mというスペック。 アイドリングストップを採用し、27.0km/L(JC08モード)という低燃費を実現しています。 先に発売された「ワゴンR」が、さらに広い室内空間で28.8km/Lを実現しているので、燃費の面でのインパクトはないものの、装備面では上回っている部分も多いので、どちらを優先するかということになるでしょう。 また、ターボエンジンは、2600回転という低い回転域から10.6kg・mという高トルクを発するエンジンで、123万円から選べるので、装備はシンプルでもいいので走りにはこだわりたいという人には大きなアドバンテージとなります。 加速性能は1.3L車並みということですが、インタークーラーに空気を導くエアインテークの大きさから、それが想像できる感じです。 また、ターボ車には吸音材などもさらに追加されていて、小型車の「フィット」以上の静粛性を実現しているといいますから、快適性にこだわるユーザーにも魅力的な車です。 ただし、ターボ車にはアイドリングストップが採用されておらず、燃費も23.2km/L(同)となりますので、燃費の面では今一歩という感じです。 それにしても、ボンネットを支える支柱にゴムが2箇所も巻いてあり、先端に樹脂パーツを取り付けてボンネット裏に傷が付くのを防止している点などは、完全に普通車の造りですよね。 本当に見えない部分までコストがかかってます。
さて、ここからは試乗レポートです。 試乗したのは、G・Lパッケージです。 乗り心地は、トールワゴンに乗っているという感覚はなく、フラットで安定感があります。 着座位置が高すぎないので、セダンタイプから乗り換えても違和感がなく、ロールも少ないです。 見た目から想像するとフワフワした乗り心地なのかと思いましたが、意外にしっかりしっとりした乗り心地で好印象でした。 また、ロードノイズなども抑えられていて、静粛性もなかなかのレベルです。 しかし、エンジン音が少々耳障りで、止まっているときはプレミアム感バツグンなのに、走り出すと軽であることを意識させられてしまったのが残念でした。 その他の騒音がよく抑えられているだけに、もう少しエンジン音をチューニングして上質な音にすれば、ぐっとプレミアム感は高まると思います。 また、ターボ車は贅沢な吸音材が多用されているそうなので、静粛性を求めるならターボ車を選んだほうがいいかもしれません。123万円から買えますし、メーカーもターボ車を積極的に推しているようです。 途中、少しだけ高速道路を走ることができたのですが、高速道路では非常に安定していました。 1610mmの全高を感じさせない、セダンタイプのような安定した走りが楽しめます。 坂道でもそれなりに走ってくれますが、唸るようなエンジン音のおかげで力不足のように感じてしまうのがもったいないです。 3人乗車でしたが、平地では力不足を感じることもなく元気に走ってくれました。 ただ、カーブでの限界が低く、少しオーバースピードでカーブにさしかかると、姿勢を崩しそうになります。 横滑り防止装置が標準装備なので、ある程度安心して走れるのですが、セダンタイプのような運転感覚と実際のボディサイズとにずれがある感じがして、個人的には少し違和感がありました。 また、試乗中に一度もアイドリングストップを体験することができなかったのも気になるところで、積極的にエンジンを止める「ワゴンR」とは実燃費の差も大きくなるのではないかと思います。 少し厳しい試乗レポートになってしまいましたが、軽の枠を超えたプレミアム感たっぷりの見た目に対して、それに見合った走りの質感を期待してしまったことと、少し前に試乗した新型「ワゴンR」の完成度が非常に高かったことなども影響しています。 おそらく、ターボ車に乗るとまったく違う印象になるのではないかと思いますので、購入を検討されている方はターボ車にも試乗されることをおすすめします。 ターボ車は試乗できずにエンジンをかけてみただけでしたが、それでも室内に侵入してくる騒音の質がずいぶん違う気がしました。 ダイハツやスズキも数年前までは高級化路線を突っ走っていましたが、最近は装備を簡素化して快適性や燃費性能を重視するようになってきています。 そんな中で高級化路線を突っ走りだしたホンダが、今後どのように軽市場を盛り上げてくれるのか、今後が楽しみになってきました。
いかがでしたか。 Nワンは、プレミアム感を追求した車ですから、燃費や使い勝手の面では他のトールワゴンに負けてしまう部分もあります。 しかし、ホンダのNシリーズはまだまだ続きます。 次は、使い勝手や燃費性能を追求した車も発売してくるでしょう。 そして、2014年にはオープンスポーツカーも発売すると発表されています。 軽自動車がメインのダイハツやスズキも大いに刺激されていることでしょうし、軽自動車の進化はまだまだ続きそうですね。
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