SUZUKI アルト
[外観デザイン 外装パーツ インパネ周り シート周り 荷室ほか]
インテリアは、とにかく居心地が良くなりました。 まずはインパネですが、実用重視の素っ気無いデザインだった旧型から一転して上質でやさしい印象のデザインになりました。 旧型を初めて見たときもベージュインテリアの採用で明るくなったと思ったのですが、新型と比べると暗く感じてしまいます。 それだけ新型のインテリアが明るく柔らかい印象ということで、ベージュとブラウンの2トーンカラーという基本を踏襲しながら、ベージュ部分の面積を拡大して曲面を多用するなどの工夫によって居心地の良さを見事に演出しているのです。 フロントウインドウの傾斜が強くなったことで、旧型よりも奥行きに余裕を感じるようになり、インパネの圧迫感が減っているのも居心地の良さを感じる要因のひとつです。 室内寸法はほとんど変わっていないのに、新型と旧型を乗り比べてみると明らかに旧型のほうが窮屈に感じます。 コンソールポケットの幅を拡大したことによって、足元の余裕はやや減った感じがしますが、全体的な印象としては今までの「アルト」とは違うゆったり感があります。 インパネに存在感を持たせて高級感を演出している「ミラ」とは対照的に、あまり主張しずぎないインテリアが好印象で、上質であっても高級ではないことによって「アルト」らしさを失っていないのです。 ステアリングホイールもグリップが太く、ウレタンですが質感はなかなか良いです。 全車オーナメント付きとなっていて、型押しだけの「ミラ」のステアリングホイールよりも上質です。
メーターは、グレードによる違いはなく、すべて同じ。 スピードメーターの視認性を最重要視したシンプルなデザインですが、見やすさという点では旧型のオーソドックスな丸型メーターのほうが良かったかも。 新型で良くなった点といえば、瞬間燃費、平均燃費、航続可能距離の切り替え表示が可能になったことでしょう。 「ミラ」ではすでにこれらの表示が可能なメーターが採用されていますが、上級グレードのみの設定となっています。 それに対して、「アルト」では全グレードに装備されていますので、うれしいですよね。 ただし、タコメーターや自発光式メーターなどといった装備は「アルト」には設定されていないので、より高級感を求めたい人には「ミラ」のほうが魅力的かもしれません。 なお、燃料タンク容量は、旧型と同じ30Lとなっていて、「ミラ」よりも6L少なくなっています。
新型のインテリアの最大の特徴といえば、このオーディオパネルでしょう。 エアコンの吹き出し口とオーディオパネルとエアコンパネルをひとつの円としてデザインしていて、非常にユニークです。 こんな遊び心は、いままでの「アルト」にはありませんでしたよね。 しかも、「F」以上のグレードには2DINタイプのCDプレーヤー+2スピーカーが標準装備で、ディーラーオプションでiPod/USB接続や外部入力端子などのシステムアップも可能となっています。 オーディオ一体型のナビを取り付ける場合は、専用パネルを使って取り付けることになりますが、その場合はナビの画面の位置がやや低くなるので、そこはやや気になる点です。 エアコンは、全車マニュアル式。 カテキンエアフィルターによって室内の空気をきれいに保ってくれますが、オートエアコンの設定がないのはちょっと残念です。 「ミラ」の場合は最廉価グレード以外はすべてオートエアコンとなっているので、それと比べると快適性は劣ります。 全体的に「ミラ」よりも安い価格設定ですから、ある程度は仕方ないとしても、最上級グレードくらいはオートエアコンが装備されてもよかったかもしれません。
新型は、大きくイメージチェンジを図っていますが、操作系などの重要な部分は変更していません。 従来の「アルト」ユーザーが違和感なく乗り換えられるように配慮しているのです。 「ミラ」が上級グレードでインパネシフトを採用しているのに対し、「アルト」はフロアシフトとサイドレバー式のパーキングブレーキを継承しています。 車の雰囲気は変わっても、今までどおりに運転できるのが「アルト」なのです。 新型はシフト周りのデザインを一新して質感が大きく向上していますが、実は変わっているのはデザインだけでなく、中身も大きく進化しました。 今まで、「アルト」といえば3ATがメインで、上級グレードでも4ATというのが当たり前でした。 しかし、新型は3ATを廃止し、上級グレードにはCVTまで採用しているのです。 しかも、そのCVTが副変速機構付CVTという、まだ市販車では珍しい贅沢なものなのです。 「ミラ」が上級グレードにCVTを採用して低燃費とスムーズな走りを実現しているので、ライバルの「アルト」がCVTを採用するのは当然の流れなのですが、新開発のCVTを採用したグレードで約95万円からという価格設定は「ミラ」よりも大幅に安く、やはり新型においても価格勝負という点において「アルト」の存在感はとても大きいです。 なお、副変速機構付CVTというのは、普通のCVTにローギヤとハイギヤの切り替えを組み合わせたもので、低速での力強い加速と高速での低燃費を両立できる画期的な新しいCVTです。 ほんの少し前に発売された高額車種の「パレットSW」に初採用された技術を、すぐにベーシックセダンの「アルト」にまで採用しているわけで、スズキがこの「アルト」をいかに大事にしているかがわかります。 実際の走りについては、試乗レポートで詳しくお伝えすることにします。 シフト周りに関してひとつ注文があるとすれば、コインホルダーですね。 たとえ小銭であっても、お金が丸見えなのは防犯上好ましくないですし、見た目にもあまり良いものではありません。 せめてフタ付きにしてもう少し容量を増やして欲しいものです。
新型は、収納もより使いやすくなっています。 まず、旧型ではひとつだったセンターコンソールのドリンクホルダーが2つに増えました。 また、コンソールポケットもより幅広になっています。 全体的な容量はそれほど増えているわけではないですが、それぞれの収納がより使いやすくシンプルになっています。 ただ、センターコンソールの収納に関しては、幅を広くしたことで足元のスペースがやや犠牲になっているので、旧型からの乗り換えだと少し気になるかもしれません。
運転席側のドリンクホルダーも、旧型と同じところに設けられているので、使いやすいです。 「ミラ」のようにプッシュオープン式にはなっておらず、依然として引き出し式のままですが、ホルダーの動きが旧型よりも複雑になり、シャキっと出てくるようになったので、質感はややアップしています。 助手席側には設けられていないので、助手席分の保温・保冷ができないのがちょっと残念で、ドリンクホルダーに関しては「ミラ」のほうが使い勝手が良いですね。
ステアリングコラムの下には、アンダートレイを装備しています。 また、その上にはディーラーオプションのETC車載器を取り付けるスペースも用意されており、すっきりビルトインも可能となっています。 写真の車は「G」なので通常のキーが付いていますが、「X」の場合はキーを挿す必要はなく、インパネにあるプッシュスタートボタンでエンジンをかけることができます。 最近は軽自動車にも徐々に採用が進んでいますが、スズキは特にその採用に積極的で、ついにベーシックセダンにまで装備するようになりました。 チルトステアリングは「X」のみに標準装備。
収納の場所については旧型とほぼ変わらないのですが、唯一大きく違うのが、このインパネトレーです。 グローブボックスとは別に大きなトレーを設けたことで、手帳や折りたたみ傘などちょっとしたものを置くスペースができたので、とても便利に使うことができます。 場合によっては、最近流行りのメモリーナビなどを装着するスペースとしても使えるかもしれません。 とにかく、手に持ったものをポンと置けるスペースがあるというのは非常に助かります。 スペースが限られているセダンタイプでは特にありがたいですよね。 エアバッグの位置をうまく調整したことによりできた収納スペースですが、これもフロントウインドウを傾斜させてインパネの奥行きが増したことによる恩恵のひとつかもしれません。
もちろん、グローブボックスもちゃんと容量を確保しています。 旧型と同じようにティッシュボックスをきちんと固定できるようになっているのもさすがです。
旧型同様に、回転格納式のフックもちゃんと装備しています。 使わないときは旧型よりもきれいに収まっていて、細かいところまで質感の向上を目指して改良をしているのがわかります。 こういった細かい積み重ねが、居心地の良さにつながっているわけですね。
次は、シート周りを中心にチェックしていきます。
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