HONDA ライフ
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ラゲッジスペースは、このタイプの車としては平均的な広さですが、奥行きがあり床面が低いので、それなりに使い勝手は良さそうです。 しかし、デザイン優先のバックドアにより、開口部はやや狭くなっています。 リアシートのスライドもできないので、スペースを調整することもできません。 この点では旧型からあまり改善されておらず、居住性の向上に重点を置いているようです。 ちなみに、床下にはスペアタイヤがあるのみで、アンダーボックスなどは装備されていませんが、工具はリアシート足元の床下に収納されており、荷物を積んだままでも工具が使えるようになっています。
大きな荷物を積むときは、このようにリアシートをフォールダウンして荷室を広げることが可能です。 しかし、操作方法は旧型から改善されておらず、ヘッドレストを取り、シートバックを倒して、座面を床に落とし込むという方法。 床面を低くでき、フロントシートの後ろギリギリまで床ができるというメリットがありますが、せめてヘッドレストをワンタッチで格納できるなどの工夫が欲しかったところです。 旧型にあった段差が無くなり、ほぼフラットな荷室を作ることが可能となったのは大きな改善点です。 また、座面下のちょっとしたスペースもムダにせず収納ボックスを設けているほか、ヘッドレストをドアポケットにしっかり固定できる工夫もなされるなど、努力の跡が随所に見られます。 奥行きと高さはタップリあるので、人を乗せるよりも大きな荷物を積む機会が多い人にとっては、魅力的だと思います。
新型ライフの新機能をもう一つ紹介しておきましょう。 「助手席チップアップスライド機構」と呼ばれるもので、写真のように座面を跳ね上げることができるのです。(Fタイプのみ) 操作は簡単で、座面全部に2つあるレバーの1つを引いて座面を持ち上げ、もう1つのレバーでスライドさせるだけです。 この独自の機能によって、軽では一般的に困難とされる車内での前後移動も可能となっています。 床は、シートレールの出っ張りさえない完全なフラット状態なので、この状態でリアシートに座ればリムジンなみの足元スペースができますし、室内高をフルに使って背の高い荷物を積むことも可能です。 そして、跳ね上げた座面の下には靴や折りたたみ傘などを収納できるアンダーボックスまで装備していて、とにかく便利でムダがないです。 派手さはないですが、隅々まで考え抜かれたインテリアは、さすがはホンダだなと感心させられます。
エンジンも新開発されました。 同社のヒット車種である小型車の「フィット」に採用されている「i−DSI」エンジンを、軽で初めて採用しました。 通常は1気筒当たり1本のスパークプラグを使用するのに対して、「i−DSI」エンジンは1気筒当たり2本のプラグを使用するツインプラグエンジンで、エンジン内の燃焼を細かく制御して完全燃焼に近づけることができるのが特徴です。 その結果、優れた燃費と高トルクを両立することが可能となっています。 スペックは52馬力/6.2kg・mと、旧型から変化していませんが、より低い回転数で最大値を発揮できるようになったことで、実用域の燃費や力強さは向上していることが期待できます。 カタログ上の燃費も、全体的に数%向上していて、重量が30〜40kgほど重くなっていることを考えれば、「i−DSI」エンジンの実力が発揮されているのではないかと思います。 ちなみに、ターボ車は旧型とまったく同スペックの64馬力/9.5kg・mですが、やはり燃費は向上しています。 また、もう一つの大きな改良点として、オートマチックが3速から4速にグレードアップしたことが挙げられます。 すでに他社は4速がほとんどで、グレードアップというよりは「やっと追いついた」という感じなのですが、高速走行時の静粛性や燃費は飛躍的に向上しているでしょう。 4L拡大されて35Lになったガソリンタンク容量との相乗効果で、給油の回数も少なく済みそうです。(4WD車は31L) ABSを全車標準装備とするなど、安全性や信頼性も向上しましたが、コーナリングを安定させる役目のあるスタビライザーがフロントのみになってしまったのは少し残念です。
この写真は、上級グレードの「Dタイプ」で、エアロパーツやアルミホイールなどが付いているので、若干イメージが違うと思います。 また、ボディカラーは「バニラクレム」です。 他グレードよりも立派に見えますね。
今回は試乗車も用意されていましたので、試乗した感想も紹介しておきましょう。 ターボ車は1ヶ月遅れての発売となりますので、今回試乗したのはNAエンジンの「Fタイプ」です。 ディーラーの出入り口から車道に出るときに若干段差があるのですが、ここをゆっくり降りると「フワーッ」と柔らかい感じで、それだけでゆったりした気持ちになります。 「ずいぶん柔らかいな」と思いましたが、一旦走りだすとフワフワ感はまったくなく、路面からの突き上げもとてもマイルド。 13インチのタイヤとガッチリとしたボディが、この快適な乗り心地を実現しているのでしょう。 さすがにカーブでは若干ロールがあり、ややアンダーステアを感じましたが、通常のスピードで走っている限りは不安に思うことはないでしょう。 しかし、やはりターボ車では14インチにしたほうがコーナリングは安心できるのではないかという気がしました。 静粛性については、旧型から格段に向上し、軽トップレベルと言えると思います。 旧型のエンジンはシャカシャカというメカニカルノイズが若干気になったのですが、「i−DSI」エンジンは「ブーン」とという音が遠くから聞こえる感じで、音質だけを比べれば1500ccクラスの小型車と聞き分けがつかないのではないかと思うほど落ち着いた感じで、安っぽさがありません。 軽のNAエンジンにありがちな、かん高い音でなく、排気量に余裕のある車のような音質なのです。 音量も3気筒エンジンとしては非常に小さく、振動もほとんど気にならないレベル。 ボンネットの裏に装備した遮音材やフロントドアの縁ゴムを2重化した2重シール構造などが、静かで快適な室内空間の実現に確かに貢献しているようです。 ロードノイズや風きり音もよく抑えられています。 エンジンは、回転を上げても音質や音量がほとんど変化せず、常にハイレベルの快適さが保たれます。 ただし、30〜40kgほど重くなった車重のせいなのか、低速からの発進時にややもたつき感がありました。 エアコンをONにしていたので、その影響もあるのかもしれません。 一度スピードにのってしまえば、あまりアクセルを踏み込まなくても流れにのって走ることができます。 着座位置は高すぎず低すぎずといった感じで、初めて乗っても緊張することなく自然に運転できる感じが好印象でした。 若干心配されたフロントピラーの死角も、運転中はまったく気になりませんでした。
せっかくなので、マルチインフォメーションディスプレイで少し遊んでみました。 瞬間燃費&平均燃費表示にして走ってみましたが、平均燃費は14.2km/L前後と表示されていました。 試乗車として街中だけを走り、乱暴な運転もされているかもしれないことを考えると、これはなかなか良い数字ではないでしょうか。 瞬間燃費は、加速時には5km/L以下まで落ち、巡航時には20km/L以上になります。 リアルタイムにバーが伸び縮みするのを見ていると楽しいですし、エコドライブに心がけたくなりますが、走行中にこれを見るのはかなり危ないです。 実際に役立つ場面というのはかなり限られてくるでしょう。 また、外気温計はなぜか「42℃」と表示されていましたが、これはなにかの間違いでしょう。 常にこういった表示がされるのなら、温度測定の方法に問題がありそうです。 実際には、平均燃費表示が最も役立ちそうですね。
「ライフ」の良いところは、シンプルであることだと思います。 高性能や高級感といったものを見せつけることなく、「さりげなく高品質」なのです。 ディーラーのサービスマンが、「エンジンルーム内や下回りなど、見えない部分も小型車のフィットと同等の品質で造ってある」と感心していたそうですが、まさにそれが「ライフ」なのだと思います。 派手さはないけれど、使うほどに良さがわかってくる車ではないかという気がしました。 ぜひ一度、見て、乗ってみてください。
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