SUZUKI ツイン ガソリンB
1ページ目で触れたとおり、この車にはバックドアがありません。 そこで、荷物の出し入れはこのようにガラスハッチを開けて行うことになります。 使い勝手は・・・正直言ってあまり良くないです。 なぜガラスハッチを採用したかというと、ハイブリッド車の場合、ラゲッジスペースに大きなバッテリーが入るので、バックドアがあってもラゲッジスペースが使えないからなのです。 おそらく、バッテリーを積んだ場合は安全性や耐久性の面などでバックドアがないほうが良いのでしょう。 これだけは、ハイブリッド車が設定されたことによるデメリットと言えるかもしれません。
取材した車はガソリンエンジン車なので、ラゲッジスペースはそれなりに確保されています。 普通のセダンタイプと同程度のスペースと考えて良いと思います。 普通の買い物や通勤程度ならまったく問題ないと思います。 一応、バックパネルフックという買い物袋をぶら下げるフックもついているなど、多少は使い勝手も考えられています。 しかし、ハイブリッド車の場合はこの上にバッテリーが載り、リアウィンドウ付近まで床面が上昇しますので、ほとんど荷物は置けません。 ハイブリッド車は通勤や近距離のドライブのみと割り切る覚悟が必要かもしれませんね。
これは「ガソリンB」のみの装備となりますが、ラゲッジアンダーボックスがついています。 ラゲッジボードを上げると若干の仕切りのあるボックスがあります。 グローブボックスがないので、この展示車の場合は取扱説明書などをここに入れてありました。 容量はそれなりに大きいので、なかなか重宝しそうです。 外から見られたくないものなどはこの中に入れておくといいですね。 しかし、ハイブリッド車の場合は取扱説明書などはどこに入れておくのでしょうか。 運転席にシートバックポケットがあるにはありますが、収納スペースについてはかなり厳しいですね。
そんな中でちょっとうれしい装備なのが、この助手席フォールダウンです。 シートバックのヒモを引っ張って前に倒すと、このようにラゲッジスペースを拡大した状態になります。(もちろん、ハイブリッド車は大きな段差ができるのであまり使えません) これが使えるのは一人乗りのときに限られますが、この状態ならゴルフバッグを積むこともできますし、買い物のときは荷物の出し入れがガラスハッチを使わなくても簡単にできますので、かなり便利です。(というより、これがなかったらかなり不便) 何度も繰り返しますが、全体としては装備は簡素化されていますが、毎日使う部分には惜しみなくコストをかけているし、よく工夫されていると思いませんか? しかし、いろいろ考えてみると、やはりこの車は一人で乗る車ですね。
さて、エンジンのスペックなども簡単に紹介しておきましょう。 エンジンは3気等DOHCで44馬力という最近のエンジンにしてはかなり非力と言えるスペックです。 しかし、最大トルクは5.8kg・mを3500回転で発揮し、この点ではなかなか高性能なエンジンと言えます。 つまりは、街乗りでのストップ・アンド・ゴーでストレスの無い加速ができるようにチューニングされたエンジンということになります。 車重も600kgと非常に軽いので、平地での60km/hくらいまでの加速ならかなり余裕があります。 ただし、高速道路での伸びという点では期待できないので、あくまで街乗り主体と割り切ったほうが良さそうです。 ハイブリッド車の場合は、このエンジンを最大トルク3.3kg・mを発揮する電気モーターがアシストします。 車重は100kg以上重くなりますが、特に低速での加速はかなり力強いはずです。 システムは、パラレル・ハイブリッド方式といって、発進時や登坂時などエンジン負荷が大きくなるときに効率よくモーターがアシストするという方式。 ですから、基本的にエンジンはかかったままなので、ハイブリッド車に乗っているという実感は湧かないかもしれません。(ただし、一定条件が揃ったときにはアイドリングストップシステムが働きます) 詳しい解説はカタログなどを見ていただくとして、とにかく小型で安価で優れたシステムなのです。 これによって、AT車でありながら燃費は32.0km/Lという驚異の数値を実現しています。(「ハイブリッドA」は34.0km/L、「ガソリンB」は22.0km/L) 2人乗りの用途が限られた車とはいえ、その努力には拍手を送りたいですね。 ただ、できれば、ガソリンタンク容量をもう少し増やしてほしかったです。 いくら燃費が良いとはいっても、21Lでは頻繁に給油しなければいけません。(とくにガソリンエンジン車の場合は満タンで300kmちょっとしか走れないと思います) 特別な車なので、ある程度は仕方ないのでしょうけどね。
<ここから試乗レポ>
やっと試乗車を見つけましたので、早速試乗してきました。 試乗車は、最も売れ筋と思われるガソリンBというグレードでした。 当日はあいにくの雨で、試乗コースも平坦な道ばかりだったのであまり細かいチェックはできませんでしたが、せっかく乗ってみましたので、「雨の中の試乗で感じたこと」という条件付きでお伝えしたいと思います。 まず、エンジンをかけると、音はやや大きめですが、振動は思ったよりも抑えられていて、鉄板むき出しで旧規格車のような印象を受けるインテリアには不似合いなほど意外にも快適。 そして驚いたのは、期待を裏切る(?)走りの良さです。 スペック上は非常に非力なエンジンで、正直、走りはあまり期待していなかったのですが、やはりボディが軽いということは走りに大きく影響するということを実感しました。 発進は力強くてストレスがなく、またそのまま踏み込んでいっても素直でフラットな加速感が持続します。 馬力が抑えられたエンジンなので高回転になると詰まった感じがあるのかと思っていましたが、日常ユースではそういった心配もしなくて良さそうです。 街中で流れに乗れないということはなさそうです。(ただし、坂道については試していないのでわかりませんが・・・) 騒音は、発進時に「ドーッ」という低音と「ガサガサ」というメカノイズがやや耳につきますが、全体としては思ったより静かでスムーズという印象でした。 乗り心地はフワフワ感がないフラットな感じで、急なハンドル操作をしても「スッ」と収まり、やや引き締まった印象。 重心が低めなのでカーブも特に不安はなく、国産車最小の回転半径を生かして急な曲がり角もいとも簡単に曲がってしまいます。 しかし、その小回り性能を生み出しているショートホイールベースはやはり乗り心地への影響は避けられないようで、前後にやや「ピョコピョコ」と揺れるような落ち着きの無さを感じることがありました。 前方視界は開放感があって運転しやすいのですが、サイドミラーの面積がとても小さくて後方視界がかなり悪いのが気になりました。 また、このボディサイズならさぞかし楽だろうと思っていたバックでの車庫入れが、意外にも難しかったのには戸惑いました。 バックドアは後ろを向けば手の届くくらいの距離にあるのですが、バックウィンドウが小さめで死角が多く、また、車両がどの方向を向いているのかが把握しにくいため、慣れないとかなり怖いように思いました。 雨の中での試乗だったため、ロードノイズや風切り音などの騒音については確認できませんでしたが、今回の試乗で得た印象からは、軽の中では平均レベルの快適さを持っているように思えました。 全体的な印象としては、「街乗りに限るならアルトよりいいかも?」という感じで、見た目のかわいさとは裏腹に、意外にしっかりと作られた車のようです。 「通勤や買い物ならこれで十分、これ以上必要ない!」と思わせてくれる、「遊び心のある真面目な車」という感じがしました。
いかがでしたか? あまり販売台数の多い車ではないので、なかなかディーラーで実車を見られる機会がないかもしれませんが、見かけたときにはぜひ一度じっくりと見てみてください。 「こういう車もアリかなぁ」なんて思ってしまいますよ。 この車はもちろん特別な車であり、ハイブリッド車が設定されたことが一番大きな特徴なのですが、随所にこれからのスズキの車作りの姿勢を感じることができたようにも思います。 「省くべきところは徹底して省き、こだわるべきところには徹底してこだわる」ことによって、私達の財布にも環境にも優しい、無駄のない車を提供していくのだというメッセージがこめられているように、私は感じました。 みなさんは、この車に何を感じますか?
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