MITSUBISHI eKスポーツ
eKワゴンは高速走行が苦手というイメージがすっかり定着してしまいましたが、Rに搭載されるこのターボエンジンはそんなことはありません。 SOHCのままではありますが、インタークーラーターボの採用で馬力は64ps、最大トルクは9.5kg・mを発生します。 最大トルクは若干控え目ですが、低速域から滑らかで力強い加速感が得られるエンジンになっています。 ミッションも4ATになりましたから、高速走行も快適になっているはずです。(Zは3ATのままです) しかし、ちょっと不満なのは、トルク控え目のエンジンに4ATのミッションを採用しながら燃費がカタログ値で16.0km/L(2WD車)と、あまり良くないことです。 この数値から推測すると、実用燃費は11km/L前後になると思いますが、ガソリンタンク容量が30Lしかないので、1回の給油で走れる距離は300kmちょっとという計算になります。 これではかなり頻繁に給油しなければいけません。 一応「優−低排出ガス」の認定は受けていますが、もう少し燃費の向上に気を使ってほしいですね。
アルミホイールは専用デザインの14インチを採用。(Zは13インチ) タイヤは155/55R14というライバル車たちと同等のサイズになり、安定感のある走りが楽しめます。 Rにはスポーツサスペンションが装備され、パフォーマンスロッドやリアスタビライザーなども追加して徹底的に剛性を高めています。 eKワゴンはもともとどっしりとした乗り心地ですが、これらのスポーティチューンによってさらに安定感のある走りができるようになっています。 Rはベンチレーテッドディスクブレーキやブレーキアシスト付きABSも標準装備ですから、ブレーキングに関しても不安はないでしょう。
<ここから試乗レポ>
まずはエンジンをかけるときですが、セルスターターの音があまり室内に侵入せず、そのエンジン始動の瞬間から剛性の高さを感じます。 その剛性感は走り出してもずっと感じることができ、乗っていて非常に安心感があります。 まず最初に驚くのは、eKワゴンとはまったく別物の加速感です。 ターボがついたので当然速いわけですが、エンジン型式は同じ(つまり基は同じエンジン)だとはとても思えないほど性格が違うのです。 3気筒エンジンですが振動もよく抑えられていて不快な騒音もなく、それでいて、アクセルを踏み込むと850kgの車両重量を感じさせない圧倒的な加速感が低速からずーっと持続します。 その加速感は6000回転(これ以上回してません)までまったく衰えず、また、フル加速時には「グァーン」という非常にレーシーな音を奏でるのです。 SOHCエンジンだとは思えないほどスポーティなエンジンになっていて、久々にハートが熱くなるようなエンジンに出会った気がしました。 エンジンはスペックだけで判断してはいけないということを改めて実感しました。
乗り心地は非常にフラットで、サスペンションの上下動が少なく路面の凸凹を忠実に拾う感じで、少しコペンに近い乗り心地のように思えました。 しかし、角がとれたマイルドなセッティングなので、不快に感じることはなく、むしろ安心感があります。 カーブでは、グイグイ曲がるというほどではありませんが、しっかりとした手応えのあるステアリングのおかげもあって、安定感はあります。 これは、155/55R14という扁平タイヤを採用したことも影響しているのでしょう。 Rの専用スポーツサスペンションは確かに剛性が高いと感じますが、ロールはもっと抑えられたのではないかなという気もします。 静粛性に関しては、各部まで徹底してこだわったというだけあって、3気筒エンジンのスポーツモデルの中ではもっとも静かではないでしょうか。 加速感は重量を感じさせないものでありながら、乗り心地はどっしりと重みのある安定感のあるもので、通常走行からスポーツ走行までどの領域でも満足できる味付けになっています。 センターメーターが見やすいかどうかは別として、タコメーターがアナログでよく目立つので、ついついスピードよりも回転数に目が行ってしまうのは私だけでしょうか。
メーカーは、eKスポーツを単なるeKワゴンのスポーツグレードではなく、別車種のスポーツワゴンとして位置付けているようですが、確かに乗ってみるとまったく違う車に乗っているような印象でした。 カタログの1ページ目に「クルマは、あなたを、ときめかせていますか。── Heart-Beat Motors」というメッセージがありますが、これは単なるキャッチコピーではなく、開発者が本当にそういう想いで作り上げた車なのだという感じがしました。 メーカーの開発者がここまでこだわりのある車を開発できるのも、eKワゴンが発表以来高い人気を維持していて、その出来に絶対的な自信を持っているからでしょう。 ユーザーからの意見にもしっかりと耳を傾けて造られているのがよくわかります。 最近、各社から続々とスポーツモデルが登場していますが、このeKスポーツもかなり注目度の高い車になっています。 良い意味で、軽の基準を変えてしまう1台と言って良いのではないでしょうか。 今後の三菱に期待大です。
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