SUBARU R1
「R2」では照明にこだわりが感じられましたが、その装備はそのまま「R1」にも受け継がれています。 この両席照明付きバニティミラーもその一つ。 天井に照明が付いているため、夜間ミラーを見るときでも眩しくなく、また、マップランプ代わりにも使えます。 意外と助手席バニティミラーの照明が夜間の運転の邪魔になることもあるのですが、この車は運転中に照明を点けてもまったく気になりません。 ルームランプも天井の中央にきれいにビルトインされ、室内全体を照らしてくれますし、天井の色も明るく、とても上質な雰囲気ですよ。 アシストグリップは助手席のみですが、回転収納式ですっきりと収まっています。
ラゲッジルームは、こんな感じです。 写真ではそれなりに積めそうな気がしますが、実際にはリヤの傾斜が強いので、バックドアを閉めるとほとんど空間の余裕がありません。 容量的には、スーパーで食料品の買い物といった程度の使い方と考えたほうが良さそうです。 「R2」のようにサスペンション部の出っ張りが気になるといったようなことはありませんが、床面が高いので重いものを載せるのは大変そう。 また、開口部もそれほど広くないので、積めるものは限られそうです。 ただ、床面をめくるとかなり深さのあるアンダーボックス(写真右上)があり、これは便利です。 外から見られたくないものを入れたり、汚れ物を入れたりと、なかなか重宝しそうです。 ラゲッジアンダーボックス自体は珍しい装備ではありませんが、このように容量の大きなものは珍しく、まとまった収納スペースのないこの車では特にありがたい装備だと思います。 ちなみに、床面のマットは撥水加工されているそうです。
リヤシートのシートバックを倒せば、このように完全にフラットな荷室を作ることができます。 倒すときは中央のヒモを引っ張るだけのワンモーションですし、この広さなら実用性も十分でしょう。 ほとんどの軽はこのように荷室を拡大することが可能ですが、完全にフラットになる車は意外に少ないので、2人+荷物という使い方が多い人にとってはポイントが高いのではないでしょうか。 また、床面や壁面などに合計8個のフックが取り付けられていて、オプションのネットなどを取り付けることで様々なアレンジが可能となっています。 4人乗車は厳しいですが、そのぶん2人乗車時の荷室のアレンジは充実しているというわけです。 助手席水平可倒機構を使えば、さらに広いフラットな荷室を作ることが可能です。 ただ、フロントシートを後ろにスライドしていると、リヤシートのヘッドレストがシートバックに引っかかってしまうので、操作時にはいちいちフロントシートを前にスライドする必要があり、頻繁に操作するのは面倒。 実際には常に倒したままの状態で使うことになると思います。
バックドアを開けてみて珍しいと思ったのが、トリムがフルカバーになっていること。 ほとんどの軽はバックドアの内側は鉄板むき出しで、トリムがあっても下半分のみというのが一般的。 しかし、この車は全体をプラスチックのカバーで覆っているので、室内から見ると鉄板が丸見えの部分がありません。 あまり気になる部分ではありませんが、バックのときにはなんとなく他の軽よりも質感が高く見えます。 一説によると、これはバックドアがスチール製ではないからではないかという話。 確かに、軽く叩いた時の音がバンパーともボディとも違います。 また、リヤの空間が狭いため後面衝突時に後席の人の頭部を保護するためではないかという説もあります。 いずれにしても、何らかのこだわりを持って作られていることは確かです。
「R1」のグレードは、「R」という1グレードのみ。 エンジンは、「R2 R」に搭載されているものと同じ、可変バルブタイミング機構付きDOHC4気筒エンジンとなります。 最大パワーは54馬力で、最大トルクも6.4kg・mと、NAエンジンとしては十分な性能を持っていながら、24.0km/Lという低燃費を実現しているのが特徴です。 4気筒エンジン独特の滑らさや静かさに加え、フロントドア2重シール構造などの徹底した遮音によって静粛性も軽の中でトップレベル。 ミッションはi−CVTのみ。 で、実際の走りはどうなの?・・・ということで、早速試乗してきましたので、以下にその感想を書きます。
まず、豪華なインテリアを見回しながらキーをONにすると、エレクトロルミネセントメーターの演出で走る気満々に。 4気筒エンジンだけあって、エンジン音は静かで振動も小さいです。 加速性能は、スーパーチャージャーエンジンの「R2 S」と比べれば明らかに劣りますが、NAエンジンとしては不満のないものでしょう。 このエンジンの良いところは、パワー云々よりもフィーリングが上質であること。 「R2 S」では低音が強く少々荒々しさも感じますが、このエンジンは音が軽くて静かでとても上質。 また、トルクがフラットで、6000回転くらいまで回してもずっと同じ加速感なのも印象的。 これはミッションにi−CVTを採用していることも影響していると思います。 特別元気なエンジンというわけではないですが、安心して快適に乗れる、優等生的なエンジンだと思います。 ボディサイズが小さいということで、軽やかな加速が得られるかと期待もしましたが、車両重量は「R2 R」と10kgしか変わりませんので、軽快感はあまりなく、ゆったりとクルージングを楽しむほうが似合う感じでした。 サスペンションは柔らかすぎず硬すぎず、なかなか快適ですが、路面からの突き上げがやや重い感じで、「R2 S」と似た乗り心地でした。 これは、「R2 S」と同じ15インチサイズのタイヤを履いているせいもあるのでしょう。 また、ロードノイズがやや大きめなのも「R2」と同じで、風切り音や外の騒音がしっかり抑えられているおかげで、ロードノイズが余計に目立っているような印象です。 全体的には静粛性はかなり高いですし、停車時の音や振動がほとんどないのもこの車の特徴。 豪華なインテリアから期待させる走りと、実際の走りとがうまくマッチしています。 「R2」との違いでもっとも気になるのが、ホイールベースが165mm短くなったことで走りがどのように変わったかということですよね。 結果から言うと、はっきり違いました。 とにかく、回頭性がとてもよくなっているのです。 Uターンや狭い路地での右左折などで小回りが効くのはもちろんのこと、スピードを出してのコーナリングでも、車体の向きが思い通りに変わってくれるという感じなのです。 「R2」も4輪独立サスペンションのおかげで素直に曲がってくれますが、一定以上のスピードではどうしても重心の高さを感じてアンダーステア気味になり、少し不安になってしまうのです。 ところが、「R1」の場合は車の向きが期待どおりにクルクルと変わり、気のせいか重心も「R2」より低く感じました。 おそらく着座位置の高さは2車とも同じくらいだと思うのですが、「R1」のほうが若干低く感じてしまうような、そんな印象を受けました。 ドライバーがちょうど車両の中心に位置するというのも回頭性の良さにつながっていると思います。 ホイールベースの違いで走りがこんなに変わるものかと、自分でも少し驚きました。 ただ、この比較は「R2 S」との比較なので、パワーとボディとのバランスもコーナリングの気持ちよさに影響しているのかもしれません。 直線ではゆったりした走りが似合うと思いましたが、コーナリングはなかなか楽しめる車となっていますよ。 もしかすると、そういったコーナリング時のバランスまで考えてNAエンジンのみのラインナップとしているのかもしれませんね。 ショートホイールベースのデメリットとして乗り心地の悪化が挙げられますが、この車に関しては、若干挙動が速いというか「R2」と比べると少しゆったり感がないかなという程度で、特に気になるレベルではありませんでした。 実用上でもっとも問題になるのは、やはり後方視界の悪さでしょう。 斜め後ろ方向の死角が非常に大きく、リヤタイヤの位置がつかめないので、バックでの車庫入れにはかなり気を使います。 サイドミラーを見ながら車庫入れするのに慣れている人はまだ大丈夫ですが、後ろを目視しながらの車庫入れは、慣れるのに時間がかかりそうです。 リヤが傾斜しているため、バンパーがどこまであるかもわかりにくいので、最初のうちは後ろをかなりあけて停車し、車外から確認するようにしたほうが良さそうです。 全長が短いので、あまり後ろをギリギリまで寄せる必要はありませんからね。 車庫入れでは神経を使いますが、リヤガラスの中央部分が下がっていてドライバーからの距離も近いので、真後ろの視界は思ったほど悪くなく、バックでの直進は意外とスムーズにできます。 2人乗りの「ツイン」などとはまた違った感じで、4人乗りと2人乗りの中間的な雰囲気がある、おもしろい車でした。
軽自動車が現在の規格になってから、室内空間の広さを優先する車が多く登場しましたが、最近はまた「ちょうど良い大きさ」の軽が増えつつあります。 もちろん、室内の広い車の人気も依然高いわけですが、「自分に一番合った車」や「人とは違う車」といった具合に、軽自動車もニーズの多様化が進んでいるように思います。 そんな中で登場した今回の「R1」は、非常に贅沢な雰囲気が味わえる新ジャンル軽だと思います。 価格も決して安くはないですし、実用性も高いわけでもなく、実際に買える人は限られているでしょう。 しかし、だからこそ乗りたいと思っている人もいるはず。 スバルは、今まで乗用車は実質的に1車種でがんばっていたのに、この数年でそれが3車種にまで増え、それぞれが個性豊かな車となっています。 メーカーが、軽自動車の分野でも、車にこだわりのある人の期待に応えようとしているのがしっかりと伝わってきますね。 走りにもスタイルにも雰囲気にもこだわりたいという人にとっては、「R1」は絶対見逃せない車ですよ。
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